インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)蛋白質に対する抗体の機能解析は、NA蛋白質の酵素活性部位周辺を認識し、その酵素活性を阻害する活性(Neuraminidase inhibition活性)をもつ抗体について行われてきた。本研究課題において、我々は活性部位から離れた「側面領域」におけるアミノ酸変異の蓄積が、この領域を認識する抗体による免疫細胞の活性化を介した感染防御能から逃れるために起きていることを示した。 次に、3種類のNA蛋白質を認識するヒトモノクローナル抗体の性状解析が進めた。これらのなかの2種類はN1亜型のNA蛋白質のみに結合したのに対し、残りの1種類はN1亜型、N2亜型およびN9亜型のNA蛋白質に結合した。Neuraminidase inhibition活性をレクチンを用いたELLAにより解析したところ、程度は異なるものの全ての抗体がNI活性を示した。さらに、これらの抗体のウイルス増殖抑制活性を培養細胞で調べたところ、NI活性と相関したウイルス増殖抑制活性を有することがわかった。 N1亜型、N2亜型およびN9亜型のNA蛋白質に結合する抗体に関して、エスケープ変異ウイルスを取得したところ、抗体の認識部位はNA蛋白質の酵素活性部位周辺であった。最後に、H1N1亜型、H3N2亜型、H5N1亜型およびH7N9亜型のウイルスに対する感染防御効果をマウス感染モデルで評価したところ、4種類の亜型のウイルスに対して、一定の感染防御活性を示した。
|