研究課題/領域番号 |
18K07143
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山岡 昇司 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90263160)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HIV / 複製 / 宿主因子 / 遺伝子ライブラリー / アクセサリータンパク質 / レンチウイルスベクター |
研究実績の概要 |
1 ヒト免疫不全ウイルスHIV-1の複製を制御することが知られている細胞因子TRIM5αとSOCS1にそれぞれ存在するSPRYドメインとSOCS boxの両者を有する細胞因子SPSB1に着目して、HIV-1複製への影響を調べたところ、組み込まれたプロウイルスの遺伝子発現を増強することがわかった。これをきっかけとして、SPSB1には転写因子AP1を介したレンチウイルスベクター産生量増強効果もあることがわかり、さらにヒトT細胞白血病ウイルス由来Taxタンパク質発現によるさらに強力なレンチウイルスベクター産生量増強効果も判明し、論文報告した。 2 cDNA発現遺伝子ライブラリーを用いた実験で、HIV-1感染に必要な細胞因子Patz1を見出した。ヒトT細胞株MT4にcDNA発現遺伝子ライブラリーを導入後、自殺遺伝子HSV-TKを発現できるHIV-1ベクターNL4-3TKを感染させることで得られたHIV-1感染抵抗性細胞株から、Patz1というp53に結合する転写調節因子のアミノ末端側(Patz1dC)をコードするcDNAを回収した。Patz1dCを単独でMT4細胞に発現させるとHIV-1感染を強く阻害し、p53発現を欠くヒト肺癌細胞株H1299でPatz1遺伝子をノックアウトするとHIV-1ベクターの感染が著しく阻害された。MT4細胞でPatz1発現をノックダウンすると、ウイルス侵入後の逆転写過程が阻害された。Patz1ノックダウン細胞では、LongA、Short2種類のisoformを発現させて初めてHIV-1ベクター感染が回復した。このことは、Patz1がヘテロダイマーとして機能することを示唆している。以上のことから、Patz1はHIV-1の逆転写過程に必要な細胞因子であると結論し、論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 HIV-1複製を制御する細胞因子についてはこれまでに、cDNA発現遺伝子ライブラリーから逆転写制御因子Patz1を発見、分子のドメイン構造にもとづくHIV-1複製の後期過程を促進するSPSB1の発見し、論文報告した。現在、遺伝子ノックアウトを起こすためのCas9発現ベクターとsgRNA発現ライブラリーを導入したヒトT細胞株MT4細胞にHIV-1を感染させ、生存したHIV-1感染抵抗性細胞を複数樹立することに成功した。それらの細胞で発現するsgRNA配列を一部同定したところ、HIV-1侵入に必要な細胞受容体CXCR4を標的とするsgRNAが含まれており、この実験系が期待通りに作動していることがわかった。 2 ウイルス粒子の出芽を抑制する機能を持つBST-2/Tetherinという細胞因子とそれに拮抗するレンチウイルスアクセサリータンパク質Vpuについての研究を行っている。HIV-1 Vpuは主にゴルジ装置でヒトBST-2とそれぞれの膜貫通ドメインを介して結合し、BST-2の細胞膜上での発現を抑制する。チンパンジーのBST2は例外的にサル免疫不全ウイルスSIVcpzのVpuではなくNefによって細胞膜上での発現を抑制されるが、他のサルに感染しているSIV由来Vpuはそれぞれの自然宿主サルのBST-2を抑制できる。興味深いことに、greater spot-nosed (GSN) monkeyに感染しているSIVgsnがヒトBST-2に膜貫通ドメインを介して結合できることが蛍光タンパク質を用いた実験でわかった。SIVcpzはSIVgsnと他のサル由来SIVとの組み換えによって生じたとされており、レンチウイルスの進化の過程で宿主制約因子BST-2との関係性がウイルスタンパク質Vpuにどのような影響を及ぼしたのか解析している。
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今後の研究の推進方策 |
1 sgRNAが標的とする遺伝子がコードするタンパク質がHIV-1複製に必要であるかどうかを確かめるために、再度当該sgRNAを発現ベクターに組み込みCas9を発現するMT4細胞で発現させ、HIV-1複製が抑制されるかどうか再現実験を行う。遺伝子ノックアウトの確認は、western blotting法とDNAシークエンス法の両者で行う。MT4細胞で表現型が確認されれば、ヒト初代培養Tリンパ球あるいはマクロファージで同じ遺伝子ノックアウトによりHIV-1感染を抑制できるか、試験する。標的遺伝子産物が酵素である場合は、阻害剤の使用あるいは開発を試みる。 2 SIVgsnがヒトBST-2に膜貫通ドメインを介して結合した結果、細胞膜上でのヒトBST-2発現を抑制することができるか、FACSを用いて解析する。もしヒトBST-2発現が抑制されていた場合は、SIVgsn由来Vpuがヒト細胞においてヒトBST-2発現抑制をとおしてHIV-1の放出を促進できるか、調べる。そのために、BST-2遺伝子をノックアウトしたHeLa細胞を作製し、同細胞ではSIVgsnの発現によって感染性ウイルス粒子の放出は変わらないが、ヒトBST-2あるいはBST-2gsnを同細胞に発現させた場合は、SIVgsn由来Vpu存在下でウイルス放出が促進されるかを、HIV-1ベクター感染に伴ってluciferaseを発現するTZM-blレポーター細胞を用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも安く試薬を購入できたため、次年度使用額が生じた。 残額は翌年度の本研究推進に必要な消耗品の購入費にあてる.
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