研究課題
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、SFTSウイルス(SFTSV)による新規感染性疾患で、我が国においても既に多くの患者が確認されている。致死率は30%近くにまで及び、国内においては現在のところ最も死亡率の高いウイルス感染症である。特異的な治療薬やワクチン等はまだ確立されておらず、こうした抗SFTSV薬の研究や開発は喫緊の課題であると思われる。本研究では、水疱性口内炎ウイルス(VSV)ベクターを利用して、SFTSVのエンベロープ遺伝子を挿入した組換えVSV(SFTSVrv)を作製し、ワクチンベクターとしての有用性や感染を防御できるような抗体医薬品の開発を試みる。本年度は、SFTSVのエンベロープ遺伝子を挿入した組換えVSVの作製に取り組んだ。VSVのエンベロープ遺伝子を欠損させたVSVベクタープラスミドにSFTSVの日本株YG-1ならびにSPL030株を挿入した。このプラスミドを用いて、組換えVSVを作製するためのヘルパープラスミドと共に細胞に遺伝子導入を行い、組換えVSVの作製に取り組んでいる。効率の問題があり、現在まで組換えVSVが得られておらず、ベクタープラスミドを調整も含めて、引き続き組換えウイルスの作製を試みる。組換えVSVの作製と並行して、ワクチン抗原となり得るSFTSV擬似粒子の作製にも取り組んでいる。これは、3分節あるSFTSVゲノムの1分節だけを用いて、ウイルスの構造タンパク質をプラスミドで供給して、1分節だけを取り込んだ擬似粒子を作るという手法で、分節遺伝子の中にリポーター遺伝子を入れておくことで、擬似粒子の存在および感染性を確認することができる。現在、この擬似粒子の作製に成功しており、今後、こちらを大量に作製して精製し、組換えVSVとともにワクチン抗原としての有効性を確認する予定である。
3: やや遅れている
当初、本年度中に組換えVSVが作製できている予定であった。ベクタープラスミドの問題なのか、組換えウイルス作製システムの問題なのか、現在検討中である。そのため、代替システムとして、SFTSV擬似粒子の作製にも取り組んでいる。ワクチン抗原としての利用を目的とする場合、こちらも有用であると考えられるため、並行して作製、解析を進める予定である。
組換えVSVの作製は、ベクタープラスミドの作り直しを含めて引き続き進めていきたい。SFTSV擬似粒子の作製に関しても、並行して行なっていく。動物実験に着手できれば、今後抗体価を測定し、効果が認められればSFTSVのチャレンジ実験での抗ウイルス効果および感染を中和するモノクローナル抗体の作製に取り組む予定である。
年度末納品等にかかる支払いが平成31年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成30年度分についてはほぼ使用済みである。
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