重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス(SFTSV)によるSFTSに対して、特異的な治療薬やワクチン等はまだ確立されておらず、こうした抗SFTSV薬の研究や開発は喫緊の課題であると思われる。本研究では、一回感染性のSFTSV擬似粒子(SFTSV-SRIPs)を用いて感染を防御できるような抗体医薬品の開発を試みている。昨年度、SFTSV-SRIPsにアジュバントを加えて、マウスに腹腔内投与すると効率よくマウスに免疫できることがわかったため、本年度、SFTSV-SRIPsを免疫したマウスから脾臓細胞を取り出し、そこから得られたリンパ球を元にISAAC法を用いて、人工抗体の作製を試みた。SFTSVのエンベロープタンパク質であるGnおよびGcに対して反応を示す抗体産生細胞を、それぞれ数十クローンずつ単離でき、蛍光抗体法およびELISA法により各クローンが産生する抗体の反応性を確認した結果、Gnに対する抗体が9種類、Gcに対する抗体が13種類得られた。これらの抗体について、SFTSVシュードタイプウイルスを用いて中和活性測定を行ったところ、Gnに対する抗体のうち2種類、およびGcに対する抗体のうち1種類が中和活性を有することが分かった。更に、これらの抗体とこれまでに得られている抗体とをカクテル化して反応させたところ、GnもしくはGcに対する抗体単独よりもGnとGcに対する抗体をそれぞれ混合させたほうが、より中和活性が高まることが明らかとなった。今後、これらの抗体を大量精製し、マウスを用いたウイルスチャレンジ実験での感染中和効果を検証する予定である。
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