研究課題/領域番号 |
18K07149
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
百瀬 文隆 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (90332204)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / リボヌクレオプロテイン複合体 |
研究実績の概要 |
A型インフルエンザウイルスの分節化ゲノムは、選択的に異種8分節が集合し子孫粒子へパッケージングされる。報告者はアンチセンス核酸プローブを用いて分節同士の近接を検出する実験系を構築し、各分節が特定のパートナー分節と結合し選択的に集合することを見いだした。この過程にはおそらく分節間の塩基対形成が必要だが、現時点でどの塩基配列・小領域が相互作用するのかなど分子機構は明らかでない。そこで本研究課題では、各分節の両末端に存在すると考えられている分節結合を担う塩基配列、いわゆる分節集合シグナルの決定と分子機構の解明を目指している。 これまで前述の実験系を用い分節接触面に位置する小領域(フットプリント領域)を順次同定してきた。第6および第8分節 (Seg.6 および 8) の分節末端に複数のフットプリント領域を見いだし、その内いくつかの領域は相補塩基に改変することで変異ウイルスの増殖力が低下することを確認した。一方、塩基変異を加えても顕著な増殖異常が見られないフットプリント領域もあり、この手法だけでは分節集合シグナルの特定に至らないと考えた。 そこで実験手順を見直し、まず注目する分節末端に変異を導入し増殖特性の評価を行い、必要な領域を特定した上でフットプリント領域と一致するか確認することにした。分節集合に必要な末端領域はタンパク質コード領域(CDS)にも及ぶため、これまで変異はコドン同義置換に限定する必要があった。しかしそれでは交換可能な塩基が少なく必要領域の絞り込みが難しいことも判明した。そこで末端領域のコード配列を二重化し、CDSとする部分は完全に同義置換を加えて潜在的な分節集合シグナルを破壊し、もう一方の配列は元配列のまま非翻訳領域として配置した。このように機能分離することで、タンパク質発現は本来のまま分節集合シグナル配列のみを置換・破壊して機能解析することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の進め方を変更し人工的な塩基変異による増殖効率試験を先に行う方針としたが、特に大きな障害はなく解析を進めることができている。分節末端のタンパク質コード領域を二重化するための方法論を確立し検証するために少し時間を取られたが、両末端同時に二重化した人工分節であっても野生型分節と同等に機能することが確認できている。Seg.6については先に得られた同義置換変異の結果と合致しており、今後この手法で各分節末端の解析を進める事にした。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス増殖に必要な分節末端配列がある程度確定できた分節については、フットプリント領域の検出を行い実際に分節同士の接触面等であることを追加確認する。末端領域を二重化した人工分節が機能的であることが確認できたので、分節集合シグナル配列を含む非翻訳領域を亜型の異なる他株の配列と入れ換えて、競合パッケージング解析を行う。これにより、なぜ分節交雑が不可能な組み合わせがあるのかなどを検証する。
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備考 |
2020年4月、(旧)北里生命科学研究所 より (新)大村智記念研究所 に名称変更
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