A型インフルエンザウイルスのゲノムRNAは分節化しており、異なる8分節が選択的に集合し子孫粒子へパッケージングされる。この過程は分節間塩基対形成に依存すると考えられているが分子機構は不明である。そこで選択的分節集合に関わるパッケージングシグナル(PS)配列の決定と分子機構の解明を目指した。 前々年度の解析によりアンチセンスプローブを用いたフットプリント領域の特定のみではPSの決定に至らないと考え、前年度より方針変更して先に必須塩基の同定を進めた。第6分節(Seg.6)の5'末端に注目し、末端側から15塩基ずつA-Gの7区画に分け、それぞれに最大限の同義置換を持つ変異ウイルスを作成した。A-C変異Seg.6は野生型配列との競合により排除され、A-C変異ウイルスは感染力価が低下した。次にA-C区画を含むタンパク質コード領域(CDS) 50塩基を直列二重化し冗長化した人工分節を作成した。機能を分離するため、CDSとする重複領域には最大限の同義置換を導入してPSを破壊し、PSとして機能する側は終止コドン以降に配置することで非翻訳領域(UTR)とした。UTR化したA-C区画の各15塩基をランダムに相補塩基置換したウイルスライブラリを作成し増殖可能な変異ウイルス群を選別した。選別配列をダイレクトシークエンシングした結果、AおよびB区画の30塩基のうち9箇所で野生型塩基が75%以上の平均比率で選択されていた。同定された箇所を相補塩基置換した変異ウイルスの感染力価は大きく低下し、子孫粒子への変異Seg.6パッケージングも阻害された。これら9塩基はいずれもN1亜型Seg.6においてほぼ100%保存されており、ウイルス増殖に必須の塩基であることが判明した。以上の結果より、同定した9塩基がSeg.6の5’末端パッケージングシグナルとして機能していると結論した。現在これらの成果を論文投稿中。
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