研究実績の概要 |
ヒト腸管オルガノイド(human intestinal organoid: HIO)への感染に胆汁酸を必須とするGII.3ヒトノロウイルス(human norovirus: HuNoV)について、ウイルスの細胞侵入時におけるラフトの関与が、前年度までの研究から示唆された(Murakami et al, PNAS, 2020)。そこで本年度は、エンドサイトーシスにより内在化することが知られており、S1PR2との関連が示唆されているEGF受容体の関与を解析した。 EGFはHIO用培地に含まれていることから、EGF(-)培地中で2時間HIOを処理した後にGII.3 HuNoVを接種した。その結果、GII.3増殖がEGF添加の有無に影響されないことが示された。また、HIO用培地にはFBSがわずかに含まれることから、FBS中のEGFによる影響も調べるため、EGF(-)/FBS(-)培地を用いて解析したところ、やはりGII.3増殖の変化は見られなかった。さらにEGF受容体阻害剤のAG-1478を用いた解析も実施したが、同様の結果が得られたことから、GII.3感染はEGF受容体に非依存的であることが示唆された。 今年度は、HIOへの感染時に胆汁酸を必須としないGII.4 HuNoVの感染メカニズムについても解析を試みた。まず、GII.3 HuNoVの感染への関与が明らかになったスフィンゴシン-1-リン酸受容体2(sphingosine-1-phosphate receptor 2: S1PR2)について、そのアゴニストであるJTE-013をGII.4 HuNoV感染時に培地に添加したが、感染阻害が認められなかった。このことから、HuNoVは遺伝子型ごとに異なる感染メカニズムを有することが示唆された。続けて酸性スフィンゴミエリナーゼのGII.4 HuNoV感染への関与の解析を解析する予定であったが、COVID-19に係る緊急事態宣言の発令等の影響により、研究資材入手の大幅な遅延等の影響により研究を進めることができなかった。
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