研究課題/領域番号 |
18K07154
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
石井 克幸 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 主任研究官 (90342899)
|
研究分担者 |
関塚 剛史 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (40462775)
山地 俊之 国立感染症研究所, 細胞化学部, 室長 (50332309)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ヒトパピローマウイルス / HPV / 細胞侵入 / CRISPR-Cas9 / sgRNAライブラリー |
研究実績の概要 |
CRISPR-Cas9sgRNA HeLa細胞ライブラリーにHSV-TK遺伝子をレポーターにもつHPV18型偽ウイルス(18PsV-TK)をガンシクロビル(GCV)存在下で接種した後、生存する細胞を回収した。細胞からDNAを抽出し、染色体に組み込まれたsgRNA配列とリード数をNGSで解析した。 細胞表面タンパク質として、細胞間をつなぐコネキシンGJC1とタイトジャンクションF11RのsgRNAが顕著に濃縮された。他は細胞内部に存在するタンパク質のsgRNAであり、その中にHPVの侵入に関わる既知遺伝子配列は含まれていなかった。濃縮されたsgRNA配列をもとにGJC1とF11Rを含む約50遺伝子のノックダウンHeLa細胞を作成し、ルシフェラーゼをレポーターにもつ偽ウイルス(18PsV-Luc2)を接種した。細胞内小器官の酸性化に関わるATP6V0Cのノックダウン細胞でルシフェラーゼ活性が著しく低下したが、他はコントロールと大差なかった。 濃縮されたsgRNAにHPVの侵入に関わる既知の遺伝子配列が無かったことや、遺伝子ノックダウンのほぼ全てが18PsV-Luc2対して抵抗性を示さなかったことから、細胞致死を利用した1次スクイーニングが正しく作用していないと考えられた。HSV-TKによってリン酸化されたGCVは、GJC1のサブタイプGJA1を通過し、隣接する細胞を死滅させることが知られている(バイスタンダー効果)。今回の実験でHPVの侵入に関わる遺伝子sgRNAが蓄積されなかったのは、この効果によりHPVに抵抗性のある細胞が死滅したためと思われた。HeLa細胞はGJA1に変異があるためこの効果を示さないとの報告であるが、GJC1のsgRNAが多く蓄積されたことから、HeLa細胞はGJC1を介したバイスタンダー効果を示すと推測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ガンシクロビルとHSV-TKを用いたスクリーニング系そのものを見直す必要が生じたため。
|
今後の研究の推進方策 |
ガンシクロビルとHSV-TKをレポーターにしたスクリーニング系そのものを見直す必要がある。これに代わるシステムとしてF-del Casp9の使用を考えている。また、GJC1とF11RのダブルノックアウトHeLa細胞を親株としたsgRNAライブラリーの作成も検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験系に問題が生じ、研究を中断したため。中断した分の研究資金は新しいスクリーニング系作成のために使用される。
|