研究実績の概要 |
HeLa細胞CRISPRノックアウト (KO)ライブラリにウシパピローマウイルスE2を発現するプラスミドを内包したHPV18型偽ウイルスを感染させた。生存細胞を回収し、ゲノムに組み込まれたsgRNA配列とリード数を次世代シーケンサーで解析した。ヘパラン硫酸合成、ER/Golgi、gamma secretase複合体のsgRNAが顕著に濃縮された。ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPGs)とgamma secretaseはHPV感染に必須な宿主タンパク質である。今回の解析により、HSPGsとgamma secretaseの重要性が再確認されると共に、本システムが正しく機能していることがわかった。また、MAGeCK解析により新規遺伝子が複数同定され、GO解析からTORシグナル、コーニファイドエンヴェロープ、プロテアソームの関与も示唆された。 新規遺伝子のうち、Folliculin(FLCN)に焦点を当て解析を行った。ホタルルシフィラーゼをレポーターにもつHPV18型およびHPV16型偽ウイルス(18PsV,16PsV)をFLCNのsgRNAが発現したHeLa細胞に感染させた。親株に比べルシフェラーゼ活性の低下が観測された。この低下はヒト角化細胞(NIKS)や子宮頸外部上皮細胞(Ect1)を用いても同様であった。FLCN-KOのHeLa細胞は18PsV,16PsVに対し強い抵抗性を示したが、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質をもつ組換えレンチウイルス (VSV-G) やアデノ随伴ウイルス2型(AAV2)には高い感受性を示した。共焦点蛍光顕微鏡観察およびウエスタンブロットによる解析から、FLCNはHSPGsの合成とそれに伴うウイルスの細胞表面接着には寄与せず、HPV粒子の細胞内の取り込みに重要な役割を果たすことが示された。
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