安全性の高いナノチューブを阻害する方法を確立するために、まず、M-Sec阻害剤の細胞毒性について調べた。ヒトの血液細胞にM-Sec阻害剤を様々な濃度で添加して培養して細胞生存率を調べたところ、顕著な細胞毒性が見られないM-Sec阻害剤の濃度を明らかにすることができた。次に、血液細胞に限らずいろいろな種類のヒト細胞株にM-Sec阻害剤を添加して培養して細胞増殖アッセイおよび細胞周期アッセイを行い、細胞株の細胞増殖に影響がないM-Sec阻害剤の濃度を明らかにした。これらの濃度は全ての細胞と通じてほぼ同様の濃度であった。この細胞毒性がない濃度のM-Sec阻害剤は細胞のM-Sec機能阻害に十分な活性を示すかを確認したところ、これまでin vitroにおけるM-Secの発現抑制実験で観察されていたナノチューブ形成阻害を再現することがわかった。これらの結果から、in vitroにおけるM-Sec阻害剤のより安全な使用法を明らかにすることができた。現在、マウスを使った薬物動態解析を進めている。 さらに、細胞毒性を示さない濃度において、M-Sec阻害剤の抗HTLV-1活性を確認した。すなわち、HTLV-1キャリア末梢血由来のCD4+T細胞と健常人由来のCD4+ T細胞の共培養において細胞毒性を示さない濃度でM-Sec阻害剤を添加してM-Sec阻害剤のHTLV-1感染抑制効果を調べた。その結果、有意にHTLV-1感染を抑制することがわかった。 これらのことから、M-Sec阻害剤はHTLV-1感染抑制剤の候補として有望であると考えられる。
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