研究課題
本年度は、前年度の結果に基づいてサル免疫不全ウイルス(SIV)感染、またウイルス特異的中和抗体誘導時における単一B細胞の動態解析を精確に行うことを目標に、まずEnv(エンベロープ)可変領域多重変異SIVmac239株(V1+V2+V4+V5領域多重点変異SIV)を作出した。これを標的ウイルスとして用いたウイルスキリング型の中和アッセイをSIVmac239特異的中和抗体誘導サル数頭につき行い、それによりウイルス中和の経時的な標的特異性を検討した。結果、野生株SIVmac239特異的中和能が誘導されたSIV持続感染個体においては、Env V1+V2+V4+V5領域点変異SIVに対しても10-20週程度のタイムラグを以て特異的な中和能が検出されることを見出した。以上の結果は、知られている限り最も高度の中和抵抗性を示すSIVmac239株の、更に中和エスケープ変異が蓄積した亜型に対しても、一定のin vivo条件が揃った個体においては抗体中和が継続することを示しており、これまでに報告されていなかった、高度抗体抵抗性エイズウイルスに対する中和抗体応答の質的な持続を示す特徴を見出す重要な結果である。また、SIV持続感染サル末梢血単核球におけるウイルス特異的B細胞応答を別途予備解析に供した結果、Env特異的B細胞の成熟水準の差により比較する動物群間のB細胞単離に乖離が生じうる可能性を見出し、これを踏まえて、中和抗体誘導の有無自体による交絡を高度に受けないB細胞単離パネルを使用する必要性が示唆された。以上を鑑みつつB細胞ソーティングのパネル変更をさらに行い、CD138を主体とするパネルに比してCD38を主体とするパネルの方が有用である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
B細胞ソーティングに使用する染色パネルにつき、分化状態の交絡を回避する必要がある点を当初計画に企図しなかった形で見出した。中和抗体応答の質的な持続状態を見出した点も踏まえ、概ね順調に推移していると考えられる。
分化状態の交絡を回避する単離用フローサイトメトリーパネルを用いて解析を進める。また、各種のin vivoパラメータの関連解析を行い、特異的B細胞応答を最もよく特徴づける形での解析を進める。
特異的B細胞ソーティング用のフローサイトメトリーパネルを分化抗体の交絡を受けないものに改良する必要性が解析途上で見出されたため。次年度は改良し再作成したパネル(作出に必要な額=次年度使用額とほぼ等しい約80万円)を使用したソーティングを企図している。
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Journal of Virology
巻: 94 ページ: e01876-19.
10.1128/JVI.01876-19.