研究課題
交付申請書に記した研究目的に即し、研究代表者は“何がDNAの能動的及び受動的脱メチル化を区別するのか“という学術的な問いに答えるべく研究を行った。この課題はエピジェネティック分野のもう一つの柱であるヒストン修飾や遺伝子発現と密接に関連しており、本年度の論文発表は以前から研究に取り組んでいたヒストン修飾や遺伝子発現に関するものが中心であった。共著者として発表した三報の原著論文では、研究代表者が得意とするRNA抽出やクロマチン免疫沈降のハンドリング、関連するバイオインフォマティックに関する部分を担当した。DNAの脱メチル化に直接関与するパートは研究開始からの期間が短く、具体的な研究成果としては発表できていないが、Inhouse Seminarや様々共同研究機関とのmeetingなどで途中経過の発表やdiscussionを行っている。共同研究先は、国内外の産学官と多岐に渡っており、国際的、学際的なネットワークの構築の実績も得られることができた。連携研究機関としては、La Jolla Institute for Immunology (LJI)、University of California, San Diego (UCSD)、University of Pennsylvania、Oxford University、Cambridge University、F.C. Cancer Centerなど多岐にわたる。
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請書に記した研究計画即して記載する。(項目1)として記載した、DNAのヒドロキシメチル化(5mhC)及びメチル化(5mC)のゲノムワイドなレベルでの解析に関しては計画以上のペースで実験を進めることができた。次々と新たな検出方法が開発、報告される中で、それらを積極的に用いて従来法と組み合わせることによって、より詳細なデータを得ることができた。具体的には、pyridine-borane(PB)を用いることで、Tdg欠損が5fC/5caCの集積をもたらすことを見出した。Tdg欠損による5fC/5caCの集積は、ビオチン修飾を利用したプルダウン法でも確認された。また、PBとTetの酵素反応を組み合わせたTAPS法は全ての修飾Cを検出できるが、この方法の利点は、ゲノムDNAの断片化を最小限に抑えることできる点であり、最大10kb程の長鎖DNAのメチル化状態を一分子内で解析可能となる。現時点では、IL4遺伝子のプロモーターからエクソン3までの約5kbの領域をlong-PCRで増幅することに成功している。また、(項目2)として記載した、DNAの受動的及び能動的脱メチル化に関わる分子の機能解析では、 TdgとTetの欠損マウスを用いて実験を行った。Th2細胞において発現するIL4遺伝子の脱メチル化は、基本的にTdg非依存的かつTet依存的に起こるが(昨年度記載済み)、HSIIの3’領域は例外的にTet非依存的であることを見出した。さらに、Tetと同じCXXCドメインを有するヒストン修飾酵素Cxxc1の欠損マウスの解析も、前年度から継続して取り組んだ。こちらに関しては論文執筆がほぼ終了し、近日投稿予定である。以上のように、予定していた研究内容は順調に進み、さらには当初の計画にはなかった新たなメチル化検出方法も積極的に利用するなど、現時点での達成度は十分であると考えている。
交付申請書の計画に沿って研究を進めることを基本とする。当初の計画よりも進捗が早いので、計画を前倒ししながら進めていく予定である。(項目1)DNAのヒドロキシメチル化及びメチル化のゲノムワイド解析は、当初は前年度で終了の予定であったが、先述の通り次々と新たな検出方法が開発されており、これらの方法も順次導入していく予定である。現在の進捗状況の項目に記入したPB法、TAPS法以外に注目しているのがAPOBECを利用したACE-seqである。この方法は5hmCを特異的に検出できる点で優れており、十分にチャレンジする価値のある手法であると考えている。(項目2)DNAの受動的及び能動的脱メチル化に関わる分子の機能解析では、引き続きTdg、Dnmt1、Tet、Ogtの欠損マウスを解析していく予定である。先述の通り、次々と新たな検出方法が開発されており、PB法、TAPS法、ACE-seq法によりシトシン修飾を網羅的に解析することも計画している。ヒストン修飾酵素Cxxc1の欠損マウスの解析も同時進行で行う予定である。分子機構の解析で新たに取り組んでいるのが、隣り合うメチル化同士が互いに影響し合うかどうかの解析(concordance解析)である。これに関しては、今まで取得したデータを、新たな自作プログラムで別角度から解析中である。さらに機械学習を用いて、脱メチル化の順序を予測するシミュレーションにも取り組んでおり、今後のより詳細な条件を検討していく予定である。(項目3)受動的及び能動的脱メチル化を区別する因子の探索に関して、sgRNAを用いたスクリーニングを予定している。既にGata3に対するsgRNAで、IL4遺伝子の脱メチル化が阻害されることを見出しており、他の候補遺伝子の探索やpioneer demethylationの阻害などの実験を計画している。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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https://www.m.chiba-u.ac.jp/class/meneki/latest_research/index.html