研究実績の概要 |
ナイーブCD4T細胞は、自身のT細胞レセプターを介して抗原提示細胞のMHC上に提示された外来抗原由来のペプチドを認識したとき、周囲に存在するIL-4とTGFbを同時に受け取るとヘルパーT細胞のサブセットの一つであるTh9細胞に分化誘導する。Th9細胞はTh2細胞と類似した免疫応答を誘導し、寄生虫の感染防御やがん細胞の排除に働くことが知られている。私はTh9細胞分化のメカニズムを解明し、ガン治療に応用できる可能性について研究を行なった。これまでの研究から転写因子GFI1がCD4T細胞からのIL-9産生を抑制的に制御していることを見出した。そのメカニズムとして、GFI1欠損細胞は、低濃度のIL-4とTGFbでもTh9細胞に分化できることから、GFI1はTGFbとIL-4シグナルの感受性を抑制していることが示唆された。そこで、GFI1欠損とGFI1野生型ナイーブCD4T細胞を単離し、Th9細胞分化条件下で培養し、培養開始後day0, 1, 2の細胞に、IL-4とTGFbを単独、もしくは両方同時に加えて、リン酸化Smadの量を測定した。その結果、GFI1欠損細胞では、リン酸化Smadの量が更新していた。つまり、GFI1欠損細胞では、TGFbの感受性が高いことがわかった。次に、GFI1欠損とGFI1野生型ナイーブCD4T細胞、および継時的に培養したTh9細胞からmRNAを抽出し、RNAseqによりサイトカインシグナルを制御する分子や転写因子の発現を調査したが、注目に値するものは見出せなかった。興味深いことに発現量の異なる遺伝子群を調べると、ある特徴があることがわかった。それらの分子群の発現量の増減による細胞の性質の変化と、GFI1とのつながりを調査することで、なぜGFI1がTh9細胞の分化を抑制しているかの大きなヒントを得ることができた。
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