研究実績の概要 |
Toll-like receptor7 (TLR7)は、病原体の核酸を認識して免疫応答を惹起する一方で、宿主由来の核酸をも認識し、非感染性の炎症を誘導することが知られている。例として、我々が樹立したUnc93 homolog B1にD34A変異を持つマウス(D34Aマウス)は、TLR7の応答が亢進することで自己免疫性肝炎などが誘導される。D34Aマウスに特徴的な免疫細胞を同定するため、フローサイトメーターによる解析を行ったところ、特殊な単球系細胞が見られた。この細胞は炎症によって誘導される単球であると考えられたため、以下inducible monocyte (iMC)と呼ぶ。 iMCの主な特徴は、(1)定常状態でサイトカインを産生すること(2)B細胞と共培養することで、B細胞の生存を増強すること、の2点である。各種TLRの発現を検討した結果、他の単球系細胞や樹状細胞と異なり、iMCはTLR3, TLR7, TLR9のいずれも高いレベルで発現が認められた。ただし、TLR3やTLR9はiMCの誘導に不要であることが示された。 また、iMCが炎症性疾患において普遍的に誘導されるかを検討するため、D34Aマウス以外の自己免疫性疾患モデルマウスにおいてもiMCの検討を行った。その結果、全身性エリテマトーデスのモデルマウスであるNew Zealand Black x New Zealand White F1マウス (NZBWF1マウス)においても病態に応じてiMCが誘導されることを見出した。一方、1型糖尿病モデルマウスであるNon obese diabetesマウス(NODマウス)では病態が進行した際にもiMCの誘導は見られなかった。このことから、iMCの誘導にはTLR7シグナル以外にも条件が必要であること、またiMCによって誘導される病態には特異性のあることが示唆された。
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