研究課題
活性型のシチジン脱アミノ化酵素であるAIDは、成熟B細胞で特異的に発現していて、抗体遺伝子が多様性を獲得する上で必須の分子であることが知られている。我々が同定した脾臓の胚中心で高発現するGANP分子は、近年の研究によって哺乳類のmRNA輸送を担うTREX-2と呼ばれる複合体の一構成因子として位置づけられ、AIDのcofactorとして機能することを明らかとしてきた。AIDは、一本鎖DNAのWRCモチーフにあるシチジンを脱アミノ化反応によってウリジンに変換するが、この反応は転写伸長時のDNA-RNAハイブリッド(R-loop)形成と関連するものと考えられる。R-loop形成の保持はゲノム不安定性を招くため、B細胞では適切に保護され、速やかにR-loop状態が収束されなければならない。本研究では、GANPおよびAIDを基軸とした転写共役R-loop形成に着目し、mRNA輸送体としてのGANPの役割があるのか、その分子基盤の解明を目指す。今年度は、GANPとR-loop形成との関連性を調べるため、R-loopを特異的に検出するS9.6モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを入手し、in vitroにおける免疫沈降の至適条件を検討した。DRIP (DNA-RNA immunoprecipitation)法の検証、非特異的領域を軽減するためのサンプル調整、さらにpublic databaseを用いたデータ比較を進めている。これらのバイオインフォマティクス解析パイプラインの構築は、今後有益になるものと期待している。
2: おおむね順調に進展している
DRIP法によるサンプル調整は一般的CHIP手法と相違はないが、明らかに精製抗体の質と持ちいる細胞可溶化液の状態によってoutput readが変動することが分かった。そのため、真の転写共役領域を濃縮するためには、この段階での状態によって今後の解析が大きく影響を受けるため、慎重に検定を進めている。
次年度は、さらにDRIP-seqの精度を向上したサンプルを持ちいて、GANP抗体を用いたCHIPデータとの比較を進めている。現時点のサンプルを用いたバイオインフォマティクス解析用パイプラインの確認は、研究協力者と共に取り組んでいる。
今年度は、次世代シークエンス解析ではありがちな不安定な検体試料から導かれる弱いデータよりも、精度の高い試料検定を重要視した。解析基準をクリアした検体を用いて次年度に解析を行なう計画である。
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