研究課題
微生物叢の乱れによる腸上皮バリアの破綻が、炎症性腸疾患、食物アレルギーなどの多様な疾患に関与する事が示唆されているが、上皮バリアの構築メカニズムにおいては不明な点が多い。近年のゲノムワイド関連解析(GWAS)より、微生物叢が影響を与える多くの疾患の感受性に関連する遺伝子の一つとしてMHCクラスIIが報告されている。申請者は、腸管上皮細胞が「非免疫細胞でありながら組織主要適合抗原複合体クラスII(MHC-II)分子を発現する」ユニークな点に着目し、MHC-II分子とその発現や機能を制御するCD74分子の発現が無菌マウスあるいは抗生物質の投与により変化すること、及びCD74欠損マウスにおいて腸管ダメージに対する感受性が亢進していることを見出した。さらに、上皮細胞のあるサブセットの機能が低下しているために、ダメージに対する修復が遅れる可能性を示唆する結果が得られている。また、申請者らは腸管上皮細胞特異的にMHC-II分子を欠損するマウスを作成し、腸管上皮細胞におけるMHC-IIが経口免疫寛容において、重要な働きを担っていること見出した。現在、その作用メカニズムについて解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
腸管上皮細胞特異的にCD74分子、あるいはMHC-II分子を欠損するマウスの作成に成功し、これらのマウスを用いて腸管恒常性の維持における腸管上皮細胞の生体内における機能解析を進められている。
ノックアウトマウスの解析を中心に、腸管恒常性の維持における腸管上皮細胞の生体内における機能解析を予定通りに進めていくだけではなく、無菌マウスも用いて、腸管恒常性維持におけるCD74分子、およびMHC-II分子の役割を解析していく予定である。
腸管内の細菌層によりCD74分子およびMHC-II分子の発現が影響を受け、その結果として、腸管の恒常性の維持の制御に関わっている可能性が大きくなったので、無菌マウスでの解析が必要となり、その準備の時間が必要となったため。
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