研究課題
老化に伴うアポトーシス細胞に対するマクロファージの貪食能の低下がマクロファージそのものの細胞老化に原因があるのか、または老化に伴ってマウス個体内の生体内環境の変化(個体老化)に原因があるのかを調べるため、老化マクロファージの若年マウスへ移植実験を行った。前年度の条件検討から、レシピエントマウスとしては、クロドロネート処理して4日後のマウスを、ドナーマクロファージとしては、マウス骨髄細胞からM-CSF共存下で3ヶ月間長期培養したマクロファージを用いた。誘導マクロファージとともにアポトーシス細胞をレシピエントマウスに移植し、その後の炎症応答を観察したところ、老化マウスにアポトーシス細胞を移植したときと同様に、炎症応答の持続化および増強が観察された。この結果は、老化に伴うマクロファージの貪食能低下が細胞老化に起因するという推察と一致し、貪食能低下が細胞老化が原因であることを明らかにした。また、炎症応答の終息における好酸球の役割について、アポトーシス細胞の投与により誘発される炎症応答は、好酸球の浸潤に伴って終息することが分かり、抗IL-5抗体によって好酸球を枯渇すると、炎症応答が持続化および増強することが分かった。この結果から、好酸球が炎症応答の終息に重要な役割を果たしていることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
条件検討の結果の基、移植実験の結果が着実に出てきている。また好酸球に関する解析も進めており、おおむね順調に進展していると言える。
M1/M2マクロファージ分極に対するp53の役割最近、M1/M2マクロファージの分極には、ガン抑制遺伝子であるp53が関わっていることが報告された。p53はM2マクロファージを誘導するc-myc遺伝子を負に制御していることが分かっており、このp53はAkt/MDM2経路によりリン酸化されることによって不活性化されることが分かっている。つまり常在性マクロファージは、p53が不活性化された状況ではM2マクロファージに分化し、活性化されるとM1マクロファージに分化する。一方、最近申請者は、若年マウスでは常在性マクロファージがM2マクロファージに、老化マウスではM1マクロファージに分極していることを明らかにしている。そこで、まず若年および老化マウスの常在性マクロファージにおいて、若年マウスではp53が不活性化され、老化マウスでは活性化されているか調べる。次にp53がM1/M2マクロファージ分極に直接関わることを証明するために、若年マクロファージ(M2マクロファージ)のp53をNutlin-3aにより活性化したとき、M1マクロファージへの分極が誘導されるか調べ、p53の活性化とM1/M2マクロファージ分極との相関関係を明らかにする。
(理由)p53の活性化を行ってマクロファージのM1/M2分極を検討する実験おいて、適切なp53活性化剤としてのnutlin-3aのロットを選出するための条件検討に予定より時間を要したため、本計画を次年度以降に計画している。(使用計画)nutlin-3aを用いたp53の活性化の検証を行い、そのときのマクロファージのM1/M2分極を調べる。また、分極に伴うマクロファージの貪食能の変化との相関関係を調べ、M1/M2分極とp53活性化との関係を明らかにする。
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