研究課題/領域番号 |
18K07183
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
永田 喜三郎 東邦大学, 理学部, 教授 (10291155)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 老化 / マクロファージ / アポトーシス / 炎症 / 貪食 |
研究実績の概要 |
老化に伴うアポトーシス細胞に対するマクロファージの貪食能の低下がマクロファージそのものの細胞老化に原因があるのか、または老化に伴ってマウス個体内の生体内環境の変化(個体老化)に原因があるのかを調べるため、若年マクロファージの老化マウスへ移植実験を行った。前年度の条件検討から、レシピエントマウスとしては、クロドロネート処理して4日後のマウスを、ドナーマクロファージとしては、若年マウス骨髄細胞から調製したマクロファージを用いた。若年マクロファージとともにアポトーシス細胞をレシピエントマウスに移植し、その後の炎症応答を観察したところ、若年マウスにアポトーシス細胞を移植したときと同様の結果が観察された。この結果は、老化に伴うマクロファージの貪食能低下が個体老化とは関係ない推察と一致し、貪食能低下が細胞老化が原因であることを明らかにした。 また、貪食能の低下の原因について、マクロファージに貪食されたアポトーシス細胞の消化過程を調べた。その結果、若年マクロファージに比べて老化マクロファージでは、アポトーシス細胞の消化速度が有意に低下していることが分かった。この結果は、老化に伴う貪食能の低下は、マクロファージの消化過程の失速が原因であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
条件検討の結果の元、移植実験の結果が着実に出てきている。また、貪食能低下のメカニズムも解析が進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ネクローシス細胞によって引き起こされる炎症応答は、ネクローシス細胞から放出されるDAMPs と呼ばれる分子群が、繊維芽細胞などに発現するRAGEやMincleなどの受容体に作用し、MIP-2およびKCの産生を誘導することによって惹起されることが分かっている。老化は、ネクローシスに陥った細胞からのDAMPsの放出量に影響を与えるばかりでなく、それが作用する受容体の発現およびシグナル伝達にも影響を及ぼすと考えられる。そこでDAMPsの放出量、DAMPs受容体の発現およびMIP-2およびKCの産生量に対する老化の影響を調べ、老化に伴って炎症応答が重篤化するメカニズムを解明する. p53の活性化がM1マクロファージへの分極とともに老化マクロファージの貪食能低下に関わっていると推察される。そこでin vitroでp53を活性化させたとき、M1マクロファージへのphenotypeの変化だけでなく、マクロファージの貪食能にも影響が及ぼされるか調べる。また老化マクロファージ(M1マクロファージ)のp53をPifithrinにより不活性化したとき、M2マクロファージへのphenotypeの変化が観察されるか、またそれに伴って貪食能が賦活化されるか調べ、p53の活性化とマクロファージの貪食能との相関関係を明らかにするとともに、老化に伴うこれらの変化のメカニズムを解明する
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 貪食能低下のメカニズムを解析する上で使用しているタイムラプス蛍光顕微鏡の故障および調製に時間を要したため、予定していいたよりも解析が進まなかったため。 (計画) 貪食能低下が老化に伴う消化過程の失速であることが予備実験で明らかになったので、アポトーシス細胞の消化過程に重要な分子の探索を行う。また今年度は、炎症応答の終息における好酸球の役割を中心的に解析し、好酸球が炎症の終息にどのように関わっているのか明らかにする。
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