研究課題/領域番号 |
18K07187
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
本村 泰隆 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (10587794)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自然リンパ球 / IL-4 / アレルギー |
研究実績の概要 |
2型自然リンパ球(ILC2)は、上皮バリアの破壊により産生されるサイトカインIL-33に応答し2型サイトカインIL-5、IL-13を産生し、アレルギー病態を誘導することで抗原非依存的なアレルギー症状を引き起こすことが明らかとなった。多くの研究がIL-33によるILC2の活性化機序に着目している中、我々はカルシウム(Ca2+)シグナル経路を介した新たなILC2活性化経路がIL-33刺激下では誘導されないIL-4産生を誘導することを見出した。これまでのILC2研究は主にIL-5、IL-13産生を介した応答に焦点が当てられており、Ca2+シグナルにより制御されるILC2由来のIL-4がどのような機能をもつのかは明らかとなっていなかった。本研究において、脂質であるシステニルロイコトルエンがCa2+シグナルを介してILC2のIL-4産生を誘導することを見出した。さらに、ILC2が発現するシステニルロイコトルエン受容体cysltr1は、IL-2に依存していた。アレルギー病態では、IL-2の産生がT細胞とILC2において確認されたことから、T細胞およびILC2自身からのIL-2がILC2のシステニルロイコトルエンへの応答性を制御していることが明らかとなった。また、in vivoにおいてシステニルロイコトルエンはIL-33に応答して好酸球、好塩基球から産生されることが明らかとなったことから、ILC2によるIL-4産生は、顆粒球によって制御されており、またこれらの細胞間での複雑な相互作用によって、ILC2によるIL-4を介した抗原非特異的なアレルギー反応が惹起されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ILC2が抗原非依存的なアレルギー症状を誘導することで、アレルギー病態が形成されることが明らかとなってきた。そのなかで、これまで脂質システニルロイコトルエンがILC2からのIL-4産生を誘導することを見出し、IL-4を介した抗原非特異的なアレルギー反応機序がアレルギー病態の形成に重要な役割を持つことが明らかとなった。今年度は、システニルロイコトルエンの産生細胞とILC2が発現するシステニルロイコトルエン受容体cysltr1を誘導するIL-2産生細胞の同定を試みた。その結果、IL-33刺激が生体においてシステニルロイコトルエン産生を誘導すること、さらには、このIL-33に応答する細胞で、システニルロイコトルエン合成酵素を発現する細胞を解析したところ、好酸球、肥満細胞、好塩基球であることがわかった。特に、好塩基球および好酸球が増加することでILC2におけるシステニルロイコトルエンを介したIL-4産生が誘導されることから、好酸球、好塩基球から産生されるシステニルロイコトルエンがILC2のIL-4産生を制御していることが明らかとなった。また、アレルギー病態におけるIL-2の産生がT細胞とILC2に限定していることからcysltr1を誘導するIL-2産生細胞がT細胞とILC2であることが明らかとなった。さらに、翌年度以降の計画であったILC2がIL-4産生を介してTh2細胞の分化およびB細胞からのIgE産生に寄与することをin vitroの共培養で確認した。したがって、ILC2由来のIL-4がTh2細胞分化およびB細胞のIgE産を制御していることが示唆されたことから、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ILC2が産生するIL-4がTh2細胞分化およびB細胞のIgE産生を制御することをin vitroにおいて確認した。そこで、次年度は、生体においてILC2が産生するIL-4がTh2細胞分化およびB細胞のIgE産生を制御するのか、そして、それらのアレルギー病態における役割を明らかにする。予備実験において、IL-2とIL-33投与によって生体におけるILC2からのIL-4産生およびB細胞からのIgE産生を誘導することを見出している。このとき産生されるIgEは抗原に非特異的なIgEであることから、非特異的なIgEが産生されているときにアレルギー病態にどのような影響を与えるのかを解析することで、ILC2が誘導する抗原非特異的なIgEの生体での役割を明らかにする。また、IgEの受容体を発現する顆粒球においても、抗原非特異的なIgEが何らかの役割を持つことが考えられることから抗原非特異的なIgEの顆粒球に与える影響を明らかにする。また、IL-4産生ILC2をマウスに移入することで、Th2細胞が誘導されるか、そして、その時、アレルギー病態に与える影響を解析することで、ILC2によるTh2細胞分化およびその生体での意義を明らかにする。
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