粘膜組織は直接外来と接する場所であり、特に感染制御や免疫応答の際には重要な役割を果たしている。通常、粘膜面における免疫応答は正と負の制御を保ち恒常性を維持しているが、この複雑なバランスを維持する為に特に腸管には数種のユニークな細胞が存在しているが、近年自然リンパ球(Innate Lymphoid Cells; ILCs)の存在が注目されている。またこのILCsは、その転写因子発現とその機能により大きく3つのグループが存在する。これまでに、主に腸管での免疫応答に関する研究が多く報告されてきたが、胃における免疫応答、特にILCsの役割については全く報告がない。申請者のこれまでの研究により、胃はILC2優位になっていることが明らかとなったが、胃に存在するILC2の役割については不明であった。そこで、胃のILC2の機能について解析したところ、胃ILC2は腸管のILC2と比較してIL-33Rを高発現し主にIL-5を産生していることが判明した。またこのILC2が産生するIL-5により、胃のB細胞分化が誘導されIgAの産生が増加する事で、ピロリ菌感染からの防御に寄与している事も明らかになった。興味深い事に、この胃ILC2sはPD-1とPD-L1を同時に発現しており。これは、PD-1は抑制的に働く事が知られていることより、ILC2がPD-1により負に制御されその活性化が抑制されている事が示唆していた。そこで、無菌マウスに抗PD-1抗体を投与し、その後ピロリ感染させたところ、マウスのピロリ感染が持続していることが明らかになった。本研究により、ピロリ感染後に生じるB細胞集積は、悪性リンパ腫の一種であるMALTとの関連性が示唆される。この発生メカニズムを明らかにする事は、胃ガンの予防・治療に繋がることが期待できる。
|