研究課題
ダイナミン(Dynamin 2)は、がん浸潤に必要な膜突起(浸潤突起)の形成因子である(Zhang et al., BBRC 2016)。本研究では、ダイナミンおよびその結合因子BARドメイン蛋白質の、浸潤突起およびその類似構造(ポドソーム)における機能の解明を目指した。まずDynamin 2のtruncation変異体を用いた解析により、浸潤突起およびポドソームへの局在に、C末端のproline-rich domainが必要かつ十分であることを明らかにした。さらにDynamin 2のSrcリン酸化部位のリン酸化型変異体を用いた解析により、Srcがdynamin 2のリン酸化を介して浸潤突起形成を正に制御する可能性が示唆された。一方、共免疫沈降法を用いてdynamin 2と相互作用する因子の探索を行い、これまでに計10種類のBARドメイン蛋白質を同定した。また免疫蛍光顕微鏡法により、膀胱がん細胞T24の浸潤突起に局在するBARドメイン蛋白質を計9種類、NIH-Src細胞のポドソームに局在するBARドメイン蛋白質を計16種類同定した。さらにBARドメイン蛋白質のtruncation変異体を用いた解析により、その多くがDynamin 2との相互作用にSH3ドメインを必要とすること、また浸潤突起およびポドソームへの局在にBARドメインが必要であることを明らかにした。今後は、ダイナミンと相互作用し、浸潤突起やポドソームへの局在が確認されたBARドメイン蛋白質について優先的に機能解析を進め、がん浸潤亢進を司る分子ネットワークの解明を目指す。また実行できていないin vitro再構成系を用いたダイナミンのアクチン制御や細胞内膜輸送などの機能解析を進め、研究計画のより一層の進展を目指す。さらに研究計画のうち、比較的進行の早いがん浸潤亢進を司る分子ネットワークの解明について、最終年度となる今年度に論文発表を行う。
2: おおむね順調に進展している
当初3年目に計画していたがん浸潤亢進を司る分子ネットワークの解明を、1年目および2年目に前倒しして実行し、dynamin 2と相互作用するBARドメイン蛋白質を多数同定し、その多くが浸潤突起およびポドソームに局在することを明らかにした。また2年目に計画していた浸潤突起への細胞内膜輸送におけるダイナミンの機能解明については、dynamin 2の浸潤突起およびポドソームへの局在に必要なドメインを同定し、さらにSrcによるリン酸化がdynamin 2の浸潤突起における機能を正に制御する可能性を示唆するデータを得た。以上のように、本研究はほぼ研究計画通りに進行しており、おおむね順調に進展している。
ダイナミンと相互作用し、浸潤突起やポドソームへの局在が確認されたBARドメイン蛋白質について、RNAiや変異体の過剰発現などの機能阻害実験を行い、細胞遊走・浸潤アッセイやECM分解アッセイを用いてその機能を解明する。また、研究計画の中で実行できていない内容、特にin vitro再構成系を用いたダイナミンのアクチン制御や細胞内膜輸送などの機能解析を進め、研究計画の一層の進展を目指す。さらに本年は本研究計画の最終年度にあたるため、研究計画のうち比較的研究が進展しているがん浸潤亢進を司る分子ネットワークの解明について論文発表を行う。
当該助成金129円は他の物品を購入した際の端数として生じたが、翌年度分として請求した助成金と合わせて、研究遂行に不可欠な文房具類などの購入に用いる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 3件)
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