胃切除検体から一部組織を採取し、オルガノイド培養に成功した。胃組織幹細胞のマーカーとして報告されているLGR5、MIST1を発現した細胞を維持し、壁細胞以外の細胞への分化を認め、長期間オルガノイドを培養することに成功している。 オルガノイドを構成する細胞において、CRISPR-Cas9 systemを用いてE-カドヘリンをノックアウトすることで印環細胞の出現を認め、その高い運動性をBZ-X700顕微鏡システムを用いて確認した。またオルガノイドを構成する細胞においては核内にCXCR4の発現を認めたが、印環細胞では細胞膜上に移動することを確認した。CXCR4-CXCL12シグナルをAMD3100を用いてブロックすることで印環細胞にアポトーシスが誘導され、ヒト印環細胞においてもCXCR4-CXCL12シグナルは治療ターゲットになりうると考えられた。 通常のオルガノイドおよびE-カドヘリンをノックアウトした後のオルガノイドを用いて遺伝子発現の差を確認したところ、血管新生関連の遺伝子並びに細胞外マトリックス分解酵素MMP特にMMP3の発現が亢進しており、細胞の運動性亢進の一因と考えられた。 またオルガノイド構成細胞においてE-カドヘリンとTP53のダブルノックアウトを行い、免疫不全マウス皮下に移植したが、腫瘍形成は認められなかった。これらのダブルノックアウト細胞の遺伝子発現を解析したところ、細胞増殖・アポトーシス関連遺伝子の発現に変化は見られなかった。 上記について現在論文投稿中である。 これらの胃オルガノイド細胞においてCRISPR-Cas9システムを用いてRUNX3またはLATS2をノックアウトすることでCDX2の発現が誘導され、腸上皮化生を誘導することに成功した。引き続き今後の研究テーマとして腸型胃がん発癌メカニズムの解析を行う予定である。
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