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2019 年度 実施状況報告書

GIST・血液がん・メラノーマのKitの異常局在とそこから発信されるがんシグナル

研究課題

研究課題/領域番号 18K07208
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

小幡 裕希  国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (20609408)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード急性骨髄性白血病 / メラノーマ / KITチロシンキナーゼ / オルガネラ / チロシンリン酸化 / ホスファターゼ
研究実績の概要

Acute myelogenous leukemia (AML) におけるKITチロシンキナーゼの恒常的活性化変異体の細胞内分布と増殖シグナル (AKT, ERK, STAT5活性化) の関係について、新たな知見を得た。前年度までに、AML細胞のKIT変異体が、これまでに考えられてきた細胞膜ではなく、小胞状オルガネラ (エンドソーム・リソソーム) に集積していることを明らかにした。本年度は、KITが「細胞内のいつ・どこで下流分子を活性化して細胞を無限増殖に導くのか」についての解析を試みた。抗リン酸化KIT抗体で免疫蛍光染色し、共焦点レーザースキャン顕微鏡で分布解析したところ、AMLのKIT変異体は主にゴルジ体で活性化しており、エンドソーム・リソソームではほとんど活性化していなかった。KITのゴルジ体への移行をブレフェルジンA等でブロックすると、KIT活性は抑制され、下流AKT, STAT5, ERKの活性化が起きなくなった。一方、モネンシンでゴルジ体からの排出を抑制しても、また、bafilomycin A1でエンドソーム-リソソーム間の輸送を抑制しても、KITシグナルは維持された。すなわち、AMLのKIT変異体は、ゴルジ体からシグナルを発信し、AML細胞を無限増殖させることが明らかになった。また、この増殖シグナルには、ゴルジ体の脂質ラフトが重要な役割を果たしていた。さらに、小胞体のKIT変異体は、蛋白質チロシン脱リン酸化酵素 (protein tyrosine phosphatases: PTPs) によって不活性化されることを示唆するデータを得た。今後は、メラノーマでの解析を進め、並行して、KIT変異体のオルガネラ停留の分子メカニズムの解明を試みる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度までに、AML細胞株 (Kasumi-1等) でのKIT変異体 (KIT-N822K) は、エンドソーム・リソソームに分布することを明確にし、本年度は輸送阻害剤処理 (brefeldin A, monensin, bafilomycin A1等), 生化学的解析および抗リン酸化KIT抗体による蛍光イメージングによって、KITシグナルが起きる場がゴルジ体であることを明らかにすることができた。さらに、ゴルジ体のKIT活性化において、脂質ラフトが重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、ゴルジ体以外のオルガネラ (少なくとも小胞体) では、KIT変異体に対する抑制メカニズム (蛋白質チロシン脱リン酸化酵素) が働いており、ゴルジ体ではその負の制御が破綻していることが示唆された。輸送調節によるシグナル抑制, 治療薬開発についても、in vitroの結果が蓄積されたている。得られた研究成果は、2019年9月にCell Commun. Signal.誌 (Vol. 17, 114-) に掲載された。

今後の研究の推進方策

メラノーマのKIT変異体についての解析を進める。現段階で、メラノーマ細胞株のKIT変異体も特徴的なオルガネラ局在を示すことがわかっているので、野生型KITを発現する細胞株と比較しながら、その詳細を調べる。さらに、変異型KITがオルガネラで活性化し、下流分子をリン酸化しているかどうかについて、生化学的解析と蛍光イメージングによって検討する。また、どのがん細胞のKIT変異体がオルガネラ停留してシグナル伝達するならば、停留の原因となる分子メカニズムの解明について取り組む。

次年度使用額が生じた理由

KIT変異体のオルガネラ停留の分子機構について、試薬選定が遅れ、納品時期が延びてしまった。それら物品については、既に手配してあるので、速やかに実験をおこなう予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] TAS-116 inhibits oncogenic KIT signalling on the Golgi in both imatinib-naive and imatinib-resistant gastrointestinal stromal tumours.2020

    • 著者名/発表者名
      Saito Y, Takahashi T, Obata Y, Nishida T, Ohkubo S, Nakagawa F, Serada S, Fujimoto M, Ohkawara T, Nishigaki T, Sugase T, Koh M, Ishida T, Tanaka K, Miyazaki Y, Makino T, Kurokawa Y, Nakajima K, Yamasaki M, Hirota S, Naka T, Mori M, Doki Y.
    • 雑誌名

      Br. J. Cancer.

      巻: 122 ページ: 658-667

    • DOI

      10.1038/s41416-019-0688-y.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] N822K- or V560G-mutated KIT activation preferentially occurs in lipid rafts of the Golgi apparatus in leukemia cells.2019

    • 著者名/発表者名
      Obata Y, Hara Y, Shiina I, Murata T, Tasaki Y, Suzuki K, Ito K, Tsugawa S, Yamawaki K, Takahashi T, Okamoto K, Nishida T, Abe R.
    • 雑誌名

      Cell Commun. Signal.

      巻: 4 ページ: 114

    • DOI

      10.1186/s12964-019-0426-3.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] NOX1-dependent mTORC1 activation via S100A9 oxidation in cancer stem-like cells leads to colon cancer progression.2019

    • 著者名/発表者名
      Ohata H, Shiokawa D, Obata Y, Sato A, Sakai H, Fukami M, Hara W, Taniguchi H, Ono M, Nakagama H, Okamoto K.
    • 雑誌名

      Cell Rep.

      巻: 28 ページ: 1282-1295

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2019.06.085.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 変異型Kitチロシンキナーゼのゴルジ体への異常局在とそこから発信される増殖シグナル ~GIST・急性骨髄性白血病におけるオルガネラシグナル~2019

    • 著者名/発表者名
      小幡裕希, 原 泰志, 椎名 勇, 村田貴嗣, 津川 翔, 山脇康平, 高橋 剛, 岡本康司, 西田俊朗, 安部 良
    • 学会等名
      第19回日本蛋白質科学会年会 第71回日本細胞生物学会大会 合同年次大会

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公開日: 2021-01-27  

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