研究実績の概要 |
昨年度までに、血液がん (マスト細胞腫, 急性骨髄性白血病), 消化管間質細胞腫 (gastrointestinal stromal tumour: GIST) 等において、無限細胞増殖のキー分子であるKITチロシンキナーゼの活性化変異体が、ゴルジ体やエンドソームに異常局在し、オルガネラから増殖シグナルを発信することを見出した。本年度は、メラノーマにおけるKIT変異体の局在解析と、各種がんにおけるKITのオルガネラ停留の分子メカニズムの解明を試みた。 メラノーマ細胞株の内在性レベルのKIT変異体は、ゴルジマーカー (golgin97, GM130) が分布する核近傍領域に集積していた。KITの活性化の指標である703番目のチロシン残基のリン酸化もゴルジマーカーと一致する位置で起きていた。このデータは、GISTにおけるものと一致しており、固形がんにおけるKIT変異体がゴルジ体に停留することを強く支持する結果となった。 さらに、共免疫沈降法と質量解析を組み合わせ、複数種類のKIT相互作用蛋白質を見出した。現在、それらが局在異常の原因となるかどうかの検討をおこなっている。別のアプローチとして、数十種類の化合物の中から、GISTのKIT変異体のゴルジ停留を解除するものを探索し、幾つかの有望な化合物を得た。それらのターゲット分子が、GISTのKITのゴルジ停留の原因となると予想し、siRNAによるノックダウンによる機能阻害実験, 共免疫沈降法および近接ライゲーション法による相互作用解析をおこなっている。
|