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2018 年度 実施状況報告書

悪性中皮腫のゲノム統合解析と合成致死性を利用した分子標的探索の基礎的検討

研究課題

研究課題/領域番号 18K07212
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

吉川 良恵  兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10566673)

研究分担者 大村谷 昌樹  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (60398229)
江見 充  兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (90221118)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード悪性中皮腫 / ゲノム再構成
研究実績の概要

悪性中皮腫 (Malignant Mesothelioma: MM) はアスベスト曝露が主要因で、極めて予後不良の腫瘍である。長期間に及ぶ酸化ストレスにより、中皮細胞の変異蓄積が腫瘍化に寄与することが予想されるが、その実態は未解明の部分が多い。現在、腫瘍化にBAP1を含む数遺伝子の関与が知られるが、すべてがん抑制遺伝子であり、治療標的分子とはなりにくい。そこで、アスベスト曝露による腫瘍の発生・進展過程で生じる変異の全体像を捉え、治療標的分子の探索、予後予測のための基礎的検討を行うことが目的である。
MMの全ゲノム解析の結果、17p11.2や19p13.1にゲノム増幅している検体が見つかった。そこで当該領域内遺伝子を含めdigitalMLPA(MLPA:Multiplex Ligation-dependent Probe Amplificationと次世代シーケンサー解析を組合せた網羅的ゲノムコピー数解析法)解析の結果、NCOR1遺伝子やTP53遺伝子に高頻度でコピー数変化が確認された。さらに高頻度にゲノムコピー数変動が見られる遺伝子中には、BAP1遺伝子の細胞内局在を調節する遺伝子X、脱ユビキチン化ターゲット遺伝子Y, Zが含まれることを新規に見出した。BAP1に変異が見られない検体でもX, Y, Zのいずれかに変異が存在する検体がある。よって、BAP1 signal pathwayが深くMM発症・進展に寄与している可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々はMMでは3p21領域遺伝子に激しいゲノム再構成が生じることを報告している (Yoshikawaら, PNAS. 113(47), 2016) 。今回、3p21以外に17pや19pもゲノム再構成が生じやすいことを見出した。特にTP53(17p) は、以前MMでは変異頻度が低いと言われていたが、高頻度のエクソン/遺伝子単位欠損が見られており、3p21領域に限定されたものではなく、別領域でも激しいゲノム再構成が生じているということが裏付けられた。

今後の研究の推進方策

BAP1 signal pathwayの制御不能がMMの発症に深くかかわる可能性があり、本研究は、腫瘍化に直接寄与するドライバー遺伝子の発見につながる可能性がある。
ターゲットとするY, Zとも転写調節に関わる遺伝子である。まずは、MM細胞株を用いノックダウンやノックアウト->それぞれの遺伝子産物発現調節の相互作用->これら分子のターゲット遺伝子の探索->腫瘍化に直接寄与するドライバー遺伝子を探索する。ドライバー遺伝子候補が見つかれば、対応する分子標的薬の探索を行い、細胞増殖阻害、アポトーシス誘導が生じる物質を探す。

次年度使用額が生じた理由

試薬の値引きによりわずかだが残額が生じた。次年度に有効活用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [国際共同研究] ハワイ大学がんセンター/ニュウヨーク大学ランゴンメディカルセンター(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ハワイ大学がんセンター/ニュウヨーク大学ランゴンメディカルセンター
  • [雑誌論文] A Subset of Mesotheliomas With Improved Survival Occurring in Carriers of BAP1 and Other Germline Mutations2018

    • 著者名/発表者名
      Pastorino,S.,Yoshikawa,Y.,Pass,HI.,Emi,M.,Nasu,M.Pagano,I.Takinishi,Y.,Yamamoto,R.Minaai,M.,Hashimoto_Tamaoki,T.,Ohmuraya,M.,Goto,K.,Goparaju,C.,Sarin,KY.,Tanji,M.,Bononi,A.,Napolitano,A.,Gaudino,G.,Hesdorffer,M.,Yang,H.,Carbone,M.
    • 雑誌名

      J Clin Oncol

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1200/JCO.2018.79.0352

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Frequent detection of structural variations in TP53 gene of malignant mesothelioma by digital MLPA2018

    • 著者名/発表者名
      吉川良恵、大村谷昌樹、玉置(橋本)知子、江見充
    • 学会等名
      第77回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] Digital MLPA identifies large difference of frequency with homozygous deletion at CDK2A (p16) gene between in cultured cells and malignant mesothelioma tissues2018

    • 著者名/発表者名
      江見充、吉川良恵、玉置(橋本)知子、大村谷昌樹
    • 学会等名
      第77回日本癌学会学術総会

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公開日: 2019-12-27  

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