Hippoがん抑制情報伝達経路において、Sav1はアダプター蛋白質として情報伝達分子の集積に主要な役割を担っている。Hippo情報伝達経路の機能異常は、細胞のがん化ならびに転移の過程にも深く関与している。しかし、Hippo情報伝達経路の、多様ながん抑制作用の分子メカニズムについては不明な点も多い。申請者らは、プロテオミクス解析により、Sav1がHsp60と相互作用する事を明らかとした。本研究では、BioID(proximity-dependentbiotinidentification、近位依存性ビオチン標識)を用いて、Sav1-Hsp60と相互作用する、新たなミトコンドリア蛋白質複合体の同定、ならびにSav1-Hsp60蛋白質複合体の細胞がん化・転移能獲得への関与を明らかとする事を目的としている。R3年度までに、(1) BioID-Sav1融合蛋白質ならびにBioID-RASSF1A融合蛋白質を発現する構築を作製し、HEK293細胞のゲノム上に相同組換えにより挿入しBioID-Sav1融合蛋白質を発現する細胞を作製した。作製した細胞株について、ウェスタンブロッティングで融合蛋白質を検出し、免疫組織化学的手法にて可視化させ解析を行った。その結果、融合蛋白質の細胞内局在は、細胞分画法を用いて得られた結果と同様の結果が得られた。(2) (1) 作製した遺伝子改変HEK293細胞を用いて、精製した融合Sav1蛋白質複合体を電気泳動で分離後銀染色を行い、新たな相互作用蛋白質のバンドを検出した。R4年度は、これらの精製蛋白質について質量分析法による解析を行った結果、いくつかの特異的タンパク質のシクナルを検出した。今後、細胞免疫染色によりこれらの蛋白質複合体の細胞生理学的な役割を明らかにして行く予定である。
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