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2020 年度 実施状況報告書

IDH賦活化による癌悪性化抑制法開発のための基盤研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K07214
研究機関岡山理科大学

研究代表者

神吉 けい太  岡山理科大学, 工学部, 准教授 (10516876)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード癌悪性化 / 肝細胞癌 / IDH / HDAC
研究実績の概要

本研究では、癌悪性化とともに発現が低下するTCA回路酵素の一つ、イソクエン酸脱水素酵素(IDH)の発現賦活化により、癌悪性化の抑制効果を検証することが目的である。2020年度は未分化型肝癌細胞にIDH1、IDH2、IDH3の各サブタイプをそれぞれ安定導入した強制発現細胞株をコントロール株と比較することを行った。その結果、IDH1およびIDH2の強制発現により、癌悪性化の引き金となる低酸素応答性の減弱効果が低酸素応答レポーターアッセイにより確かめられた。またこの効果は複数のクローン株で認められた。一方でIDH3強制発現株ではこのような効果は認められず、コントロール株と差はなかった。
低酸素応答の減弱効果をさらに検証するため、低酸素誘導因子Hif1-αの分解経路指標である水酸化型Hif1-αをウェスタンブロットで検出した。その結果、IDH1、IDH2の強制発現株ではHif1-α分化経路の活性化が示唆された。さらに低酸素応答遺伝子であるVEGFや解糖系代謝遺伝子の発現変化においてもIDH1、IDH2の強制発現株では低酸素による発現上昇が減弱することが確かめられた。これらの結果から、IDH1、IDH2の強制発現により未分化型肝癌細胞の低酸素適応を阻害できる可能性が示された。
さらに肝癌細胞の脱分化を引き起こすエピジェネティック因子としてヒストン脱アセチル化酵素HDACファミリーに着目した研究を進め、その中でclass IIに属するHDAC9が肝癌細胞の脱分化と幹細胞性に関わりが深いことを明らかにした。HDAC9の阻害により足場非依存成長などの悪性形質の減弱効果が認められ、この成果はCancers誌に発表された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題は2020年度が最終年度であったが、in vitroにおける機能解析を重点的におこなったため、in vivo実験に進むことができなかった。しかしながら低酸素応答の減弱効果という重要な知見を得られたため、研究期間の延長措置により2021年度においてin vivo実験を実施する予定であり、現在その準備を進めている。
また別の悪性化要因である上皮間葉系移行(EMT)に対する抑制効果についても検証を進めるため、分化型肝癌細胞でありTGF-β刺激によるEMTを顕著に起こすHuH1細胞を用いたIDH強制発現株の樹立を行い、各サブタイプの強制発現クローンを得ている。これらについても表現型解析を行い、悪性形質に対する有益な効果を探索している。

今後の研究の推進方策

2021年度は癌ゼノグラフトモデルにおける検討を進める。とくに低酸素応答性の減弱効果に着目し、腫瘍内の細胞死評価や血管形成について重点的に評価する。またHuH1細胞をもちいた強制発現細胞株について、細胞運動性や足場非依存性成長などの悪性形質について重点的に評価を行う。これらの結果をまとめ、学術論文として国際誌に公表を目指す。

次年度使用額が生じた理由

本年度においてin vitro実験における表現型解析を重点的におこなったため、動物実験の開始を遅らせざるを得なかった。動物実験は本課題の重要実験であるため、経費を次年度に繰り越し、2021年度に実施することとした。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] HDAC9 Is Preferentially Expressed in Dedifferentiated Hepatocellular Carcinoma Cells and Is Involved in an Anchorage-Independent Growth2020

    • 著者名/発表者名
      Keita Kanki, Ryota Watanabe, Le Nguyen Thai, Chun-Hao Zhao, Kyoko Naito
    • 雑誌名

      Cancers

      巻: 12 ページ: 2734-2746

    • DOI

      10.3390/cancers12102734

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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