研究課題/領域番号 |
18K07218
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
長山 聡 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70362499)
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研究分担者 |
片山 量平 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 部長 (60435542)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 癌細胞株 / 薬剤感受性 |
研究実績の概要 |
(1) 大腸癌幹細胞様細胞株の樹立 大腸癌培養株の樹立には、癌幹細胞性を持つ細胞が維持されるという培養液と条件(Ohata, Cancer Res. 2012)を利用した。同時性多発肝転移を伴うStage IV症例で、原発巣を切除する症例や、術前生検によるBRAF変異症例や、KRAS変異(G12Cなど)症例は積極的に検体収集している。現在までに約500症例での樹立を試みている。 (2) 大腸癌幹細胞様細胞株のプロテオゲノムプロファイリングと薬効評価 1) 遺伝子変異解析:KRAS、BRAF、PIK3CA、PTEN、APC、βcateninなど大腸癌において変異が報告されている遺伝子に加えて、データベースに登録されている変異遺伝子から合計108個を選別し、次世代シークエンサーを用いて、ターゲットシークエンスを行っている。2) プロテオミクス:樹立した大腸癌幹細胞様癌細胞株(特にBRAF変異株)を用いて、プロテオーム解析を開始した。分子標的薬の主要標的となっているチロシンリン酸化に特化したチロシンリン酸化プロテオーム解析も同時に行っている。3) 薬効評価:樹立した大腸癌幹細胞様癌細胞株を用いて、標的が明確となっている92種類の抗腫瘍薬剤からなるオリジナルライブラリー(EGFR阻害剤、VRGF阻害剤、FGFR阻害剤、mTOR阻害剤、PI3K阻害剤、MEK阻害剤、Wnt系阻害剤など)に対する薬剤感受性を検討している。 (3) 解析状況 KRAS変異型大腸癌症例に対しては、複数の阻害剤を組み合わせることにより、薬剤感受性群を抽出することが可能であった。BRAF変異大腸癌由来の細胞株を用いた感受性スクリーニングでは、特定の薬剤に著効する一群の細胞株があることがわかった。KRAS G12C変異を持つ樹立細胞株では、G12C阻害剤単剤では効果が乏しかったため、他剤との併用効果を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、概ね順調に進展していると思われます。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、薬剤感受性スクリーニングの結果から、感受性に基づいたKRAS変異株およびBRAF変異株の層別化を行いつつ、特異的に有効な薬剤の探索を行う。また、ゲノミクス・プロテオミクスデータと薬剤感受性・抵抗性データを統合し、キナーゼ・基質データベース等を活用したインフォマティクス解析によって、薬剤感受性を規定する因子(キナーゼ)群やシグナル経路を推定する。さらに、候補となったキナーゼやシグナル経路の阻害剤を用いて、それらのキナーゼやシグナル経路が本当に薬効に関与しているかどうか検証する。
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