(1) 大腸癌幹細胞様細胞株の樹立 同時性多発肝転移を伴うStage IV症例で、原発巣を切除する症例や、術前生検によるBRAF変異症例や、KRAS変異(G12Cなど)症例は積極的に検体収集している。現在までに約550症例での樹立を試みている。 (2) 大腸癌幹細胞様細胞株のプロテオゲノムプロファイリングと薬効評価 1) 遺伝子変異解析:KRAS、BRAF、PIK3CA、PTEN、APC、βcateninなど大腸癌において変異が報告されている遺伝子に加えて、データベースに登録されている変異遺伝子から合計108個を選別し、次世代シークエンサーを用いて、ターゲットシークエンスを順次行っている。2) プロテオミクス:樹立した大腸癌幹細胞様癌細胞株(特にBRAF変異株)を用いて、プロテオーム解析を開始した。分子標的薬の主要標的となっているチロシンリン酸化に特化したチロシンリン酸化プロテオーム解析も同時に行っている。3) 薬効評価:樹立した大腸癌幹細胞様癌細胞株を用いて、標的が明確となっている92種類の抗腫瘍薬剤からなるオリジナルライブラリー(EGFR阻害剤、VRGF阻害剤、FGFR阻害剤、mTOR阻害剤、PI3K阻害剤、MEK阻害剤、Wnt系阻害剤など)に対する薬剤感受性を順次行っている。 (3) 解析状況 BRAF変異大腸癌由来の細胞株を用いた感受性スクリーニングでは、特定の薬剤に著効する一群の細胞株があることがわかった。現在、この著効した薬剤の標的を同定するために、in vitro実験を行い、標的候補を絞り込むことが出来た。KRAS G12C変異を持つ樹立細胞株では、肺癌の場合と異なり、G12C阻害剤単剤では効果が乏しかったため、他剤との併用効果を検証し、有望な併用薬を絞りこむことが出来た。
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