研究課題
MetはHGFをリガンドとする受容体型チロシンキナーゼであり、様々ながんで異常な活性化がみられる。Metは特に浸潤転移、再発、治療抵抗性などがん悪性化に深く関わることから、特有の下流シグナルが存在すると考えられる。申請者はMet遺伝子増幅を持つがん細胞のリン酸化プロテオミクス解析により、機能未知なタンパク質PLEKHA5を同定した。先行研究により、PLEKHA5はMetの下流でリン酸化され、Met依存的ながん細胞の悪性化に関わることを見出した。本研究では、PLEKHA5の詳細な機能解析により、がん悪性化を担うMet特異的なシグナル伝達機構を解明することを目的とする。具体的には、MetによるPLEKHA5リン酸化の機序と意義、PLEKHA5が関わるMet下流シグナル、マウスモデルや臨床サンプルを用いたPLEKHA5の生理機能及び病理学的機能の解析を行う。今年度は、先ずデータベース解析と変異体の作製により、PLEKHA5のMetによるリン酸化部位を同定し、リン酸化特異的抗体の作製に成功した。現在、リン酸化変異体も利用してPLEKHA5のチロシンリン酸化のMet特異性、細胞内の局在や機能ついて詳細に検討を行っている。さらに、Met依存的ながん細胞よりTAP法を用いてPLEKHA5を精製し、結合タンパク質の探索を行った。SDS-PAGEと銀染色により解析を行った結果、複数の結合タンパク質のバンドを検出し、質量分析によりこれらのタンパク質を同定した。現在、その結合の特異性や意義の検討を進めている。さらにPLEKHA5のリン酸化の有無による結合や活性状態の変化等も検討する。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、MetによるPLEKHA5のチロシンリン酸化の機序と意義、PLEKHA5が関わるMet下流シグナル伝達経路の解明、マウスモデルや臨床サンプルを用いたPLEKHA5の生理機能及び病理機能の解析を行うことを目指している。今年度は、PLEKHA5のリン酸化部位を決定し、リン酸化特異的抗体の作製に成功した。またPLEKHA5の結合タンパク質を複数同定することができた。これらはPLEKHA5の分子機能の解明に大きく寄与する成果であることから、本研究は順調に進んでいると考えられる。
今後はさらに、MetによるPLEKHA5リン酸化の機序と意義の解明を進めていく。また抗体アレイやDNAマイクロアレイなどを用いて、MetとPLEKHA5の発現抑制により共通して発現や活性化が変化するシグナル伝達経路の網羅的解析などを行い、結合タンパク質の解析と合わせて、PLEKHA5が関与するシグナル機構の全容解明を試みる。さらに、胃がんの臨床サンプルを用いて免疫組織化学染色を行い、PLEKHA5の発現、リン酸化と臨床病理学的特徴及び予後との相関、Metの発現やリン酸化、遺伝子増幅との相関を検討する。またノックアウトマウスを用いた生理機能の解明も検討する。
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