研究課題
(1) 膵癌肝転移のバイオマーカーとしての肝静脈血中CTCの有用性の検討: 膵癌患者3例を選定し、肝静脈血、門脈血、末梢血を採取した。2例は手術時肝転移のないStage IIBの膵癌、1例は肝転移を有するStage IVの膵癌症例であった。各血液から微小流路デバイス法 (Microfluidic Chip; 日本遺伝子研究所)によりCTCを捕捉し、CK(+),Vimentin(-),CD45(-):上皮系または、CK(-),Vimentin (+),CD45(-):間葉系のCTC数をカウントした。Stage IIB症例の門脈血、肝静脈血いずれにもCTCは存在していることを確認した。一方、Stage IV症例では他2例と比較して肝静脈血、門脈血中のCTCは多く、特に間葉系CTCが多く存在していた。特筆すべきは上皮系、間葉系の両極の特性をもつ"metastable cell"が肝静脈血中にのみ認めたことであり、異なるphenotype (転移形成能)をもつCTCの可能性を示唆した。(2) 肝静脈血中CTCのトランスクリプトーム解析: 異なるphenotypeをもつCTCのゲノム変化を網羅的、統合的に解析するべく、オンチップ・バイオテクノロジーズとの共同研究にてフローサイトメトリーを用いたCTCソーティングを行い、RNAを抽出する予備実験段階である。具体的には健常人末梢血およびPC9細胞株を使用し、CD45,CD16,CD19,CD163,CD235a陰性条件でEpCAMとVimentinを用いて純度高くCTCが採取できるようゲート設定を行った。また同条件で採取した血球細胞のRNA-QCを行い、解析に足ることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
申請時の予定におおむね沿い、本年度は膵癌切除症例を対象とした微小流路デバイス法によるCTCの補足を行った。当初10例を予定していたが、肝転移を有する症例で明らかにphenotypeが異なるCTCが肝静脈血中に含まれていたことから3例の解析とし、トランスクリプトーム解析の予備実験に移った。CTCのシングルセル解析を予定していたが、CTCの補足に際して純度高く行うことが困難であり、各血液から採取したCTC全体をRNAseq解析を行うこととし、予備実験まで完了した。
微小流路デバイス法により補足したCTCは肝転移を有する症例で肝静脈血、門脈血中のCTCは多く、特に間葉系CTCが多く存在しており、さらに上皮系、間葉系の両極の特性をもつ"metastable cell"が肝静脈血中にのみ認めたことから、肝静脈血中CTC特有に変化している遺伝子が肝転移形成能獲得につながる新規ドライバー遺伝子であるという当初の仮説を裏付けうると考えられ、症例集積、解析を進めていく予定である。具体的にはフローサイトメトリーを用いたCTCソーティングの予備実験が終了したため、今後、膵癌切除患者の肝静脈血、門脈血のサンプル収集を行い、RNAseq解析を行っていく予定である。得られたデータをもとに肝静脈血、門脈血中のCTCの遺伝子発現を直接比較し、肝静脈血中のCTCに発現する特有の遺伝子を同定する。
研究初年度に予備実験まで終了し、対象症例に関してRNAseq解析を行いうると想定していたが、予備実験終了後に対象症例がなかったため、差引額が生じた。当該年度の差引額を次年度に繰越して今後の対象症例のRNAseq解析として使用する計画である。
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