研究課題/領域番号 |
18K07222
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) |
研究代表者 |
井口 友宏 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 肝胆膵外科医師 (30598959)
|
研究分担者 |
杉町 圭史 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 肝胆膵外科医長 (90452763)
古川 正幸 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 副院長 (70601912)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 膵癌 / 循環腫瘍細胞 / 肝転移 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究実績より、門脈血、肝静脈血いずれにも循環腫瘍細胞 (CTC)が存在していたこと、肝転移を有する症例の肝静脈血、門脈血中のCTCは多く、特に間葉系CTCが多く存在していたこと、さらには上皮系、間葉系の両極の特性をもつ"metastable cell"が肝静脈血中にのみ認めたことから、当該研究の仮説のごとく、両血液間には異なるphenotype (転移形成能)をもつCTCが存在している可能性を示唆した。
(2) 肝静脈血中CTCのトランスクリプトーム解析: 前年度より引き続き、異なるphenotypeをもつCTCのゲノム変化を網羅的、統合的に解析するべく、オンチップ・バイオテクノロジーズとの共同研究にてフローサイトメトリーを用いたCTCソーティングを行い、RNAを抽出する予備実験を進めた。CD45、CD16、CD19、CD163、CD235a陰性条件でEpCAMとVimentinを用いて純度高くCTCが採取できるようゲート設定を行った。また捕捉したCTCを蛍光染色にても確認した。 抽出したRNAからのcDNAライブラリーの構築が不良であったため、保存、輸送方法など条件設定を見直す必要があった。見直し後は2例についてcDNAライブラリーを構築でき、増幅を確認した。この2例についてRNA-seqを行ったところ、マッピング率90%であり、解析に足る結果を得ている。さらに症例を集積し、網羅的に得られた遺伝子発現やスプライシングバリアント、融合遺伝子の有無において肝静脈血、門脈血間での差異を解析し、転移形成に関わる特有の遺伝子異常を明らかにしていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の予定におおむね沿い、膵癌切除症例を対象とした微小流路デバイス法によるCTC捕捉を行い、トランスクリプトーム解析の予備実験に移った。 当該年度も順調にフローサイトメトリーで捕捉したCTCからRNAを抽出する予備実験を進めていたが、cDNAライブラリーを構築できず、保存方法や輸送方法の再検討を要した。また臨床的には10月より膵癌に対する術前化学療法がガイドラインに記され、直近の膵癌に対する手術が減じたことにより進捗がやや遅れていると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
微小流路デバイス法により捕捉したCTCは肝転移を有する症例で肝静脈血、門脈血中のCTCは多く、特に間葉系CTCが多く存在しており、さらに上皮系、間葉系の両極の特性をもつ"metastable cell"が肝静脈血中にのみ認めたことから、肝静脈血中CTC特有に変化している遺伝子が肝転移形成能獲得につながる新規ドライバー遺伝子であるという当初の仮説を裏付けうると考えられ、フローサイトメトリ―を用いたCTCソーティングを行っている。 条件設定が終了し、2例に関してはRNA-seqが完了し、マッピング率90%と解析に足る結果を得ている。今後も膵癌切除患者の肝静脈血、門脈血のサンプルを収集し、RNA-seqを行う。得られたデータをもとに肝静脈、門脈血中のCTCの遺伝子発現を直接比較し、肝静脈血中のCTCに発現する特有の遺伝子を同定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
順調にフローサイトメトリーで捕捉したCTCからRNAを抽出する予備実験を進めていたが、cDNAライブラリーを構築できず、保存方法や輸送方法の再検討を要した。 また臨床的には10月より膵癌に対する術前化学療法がガイドラインに記され、直近の膵癌に対する手術が減じたことにより、RNA-seq施行例が2例に留まり、差引額が生じた。 当該年度の差引額を次年度に繰り越して、今後の対象症例に対しRNA-seqを行う予定である。
|