血管新生は、腫瘍進展のみならず、虚血性心疾患など様々な疾患治療にとって重要である。血管新生制御の分子機構を明らかにすることはこれらの疾患治療に直結する。本研究は、最近我々が発見した新規血管新生因子CUL3複合体を標的としてin vivoにおける本分子の役割を明らかにし、その機能的阻害剤の開発により疾患治療への応用を目指すものである。 本年度では生体内におけるCUL3複合体の役割を明らかにするために、タモキシフェン依存的にCUL3複合体を機能阻害させるコンディショナルノックアウトマウスを用いて網膜血管新生をモデルとして解析を進めた。CDH5CreERT2マウスとFloxed CUL3またはKCTDマウスを交配させ、生後P0マウスに対してタモキシフェンを投与することで血管内皮細胞特異的にCUL3複合体の機能を阻害し、P5におけるマウス網膜血管形態を観察した。その結果、タモキシフェン投与により明らかな血管新生阻害としての表現型が観察され、ファロイジン染色により明らかなアクチン骨格異常も観察された。これらの結果から、CUL3複合体はin vivoで起こる血管新生においても重要な役割を果たすことが明らかとなった。 一方、KCTDの機能阻害剤を探索するため、AlphaScreenシステムによりKCTDに結合する低分子化合物のスクリーニング解析を行なった。その結果、KCTDとCUL3との複合体形成によりユビキチン基質標的となる細胞骨格制御タンパク質との結合を特異的に阻害する低分子化合物を見出すことに成功した。これら見出した化合物はCUL3とKCTDとの結合は阻害せず、KCTDによる基質認識部位特異的に結合する化合物である可能性が高い。現在当該化合物の血管新生阻害活性についてさらなる解析を進めているところである。
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