研究課題/領域番号 |
18K07236
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
門松 毅 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90555757)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 稀少腎細胞がん |
研究実績の概要 |
Xp11.2転座型腎細胞がんモデルマウスと尿細管上皮細胞特異的にANGPTL2を欠損したモデルマウスにおいて、尿中尿素窒素(BUN)測定を行い、野生型のモデルマウスに比べ、尿細管上皮細胞特異的ANGPTL2欠損モデルマウスにおいてBUNレベルの上昇が抑制されていたことに加え、その生存期間も有意に延伸した。これらの結果から、尿細管上皮細胞におけるANGPTL2発現上昇が、Xp11.2転座型腎細胞がん発症・進展を促進していることが示唆された。 また、Xp11.2 転座型腎細胞がんの発症・進展に関わるANGPTL2シグナルの役割を解析する目的で、ヒトXp11.2 転座型腎細胞がん細胞株を用い、がん細胞の細胞代謝に着目し検討を行った。ANGPTL2をノックダウンしたがん細胞株では、コントロールのがん細胞株に比べ、ミトコンドリア代謝機能が亢進していることを見出した。さらに、ANGPTL2をノックダウンしたがん細胞株を用いてRNA-seq解析を行ったところ、ANGPTL2ノックダウンによってDNA損傷修復経路の活性化を示唆するような遺伝子発現の変化が認められた。これらより、ANGPTL2シグナルによって、がん細胞におけるミトコンドリア機能亢進に由来するROSの産生増加がDNA障害をもたらし、結果としてがん抑制に寄与している可能性が考えられた。 我々が同定した尿中バイオマーカーとしてmiRNAの有用性を検証するため、モデルマウスのがん組織より樹立した初代転座型腎がん細胞株にルシフェラーゼ遺伝子を導入し、野生型マウスの尾静脈より投与した肺転移モデルを作製したが、同細胞株の生着が認められなかった。また、重度免疫不全マウスを用いて同様に移植実験をおこなったが、同様にがん細胞株の生着は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルマウスのがん組織より樹立した初代転座型腎がん細胞株の移植モデル作製には至らなかったが、尿細管上皮細胞特異的ANGPTL2欠損モデルマウスを用いた解析から、尿細管上皮細胞におけるANGPTL2発現上昇が、Xp11.2転座型腎細胞がん発症・進展を促進と連関していること、ヒトXp11.2 転座型腎細胞がん細胞株を用いた解析からANGPTL2シグナルとがん細胞における細胞代謝制御およびDNA損傷応答との関連を見出すなど、本研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ANGPTL2をノックダウンしたがん細胞株におけるROSレベルやDNA損傷応答活性化の有無を検討する。また、これ以外にも、がん細胞の増殖、運動能、浸潤能がANGPTL2ノックダウンによって影響を受けているか検討を行う。さらに、RNA-seq解析結果を精査し、Xp11.2転座型腎細胞がん発症・進展に関わるANGPTL2シグナルを検討する。 尿中バイオマーカーとしてmiRNAの有用性については、ヒト尿細管上皮細胞株とヒトXp11.2 転座型腎細胞がん細胞株の培養上清に含まれるエクソソームにおけるmiRNAの含有量を比較検討することで検証を行う。また、本研究期間を通じて、健常者、Xp11.2転座型腎細胞がん患者、およびXp11.2転座型腎細胞がん以外の腎がん患者の尿サンプルを随時採取し、最終年度までにヒトにおいても尿中エクソソーム内miRNAがXp11.2転座型腎細胞がんに特異的なバイオマーカーとして有用か検証する。 バイオマーカー候補であるmiRNAがPRCC-TFE3の直接の標的であるか検討するため、ドキシサイクリン依存的にPRCC-TFE3を高発現するヒト尿細管上皮細胞株を用いて、PRCC-TFE3と当該miRNAの発現レベルの連関やクロマチン免疫沈降法による当該miRNA遺伝子座におけるPRCC-TFE3の結合を解析する。
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