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2019 年度 実施状況報告書

稀少腎細胞がんの個別化治療戦略確立を目指した基盤研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K07236
研究機関熊本大学

研究代表者

門松 毅  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90555757)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードANGPTL2 / TFE3融合遺伝子 / 転座型腎細胞がん
研究実績の概要

昨年度に引き続き、Xp11.2 転座型腎細胞がんの発症・進展に関わるANGPTL2シグナルの役割を解析する目的で、昨年度実施したRNA-seq解析の結果を精査した。その結果、ANGPTL2ノックダウンによってDNA損傷修復経路や細胞周期の制御に関連する遺伝子発現が主に変化していることを見出した。また、最近、TFE3融合遺伝子がp21の発現を制御しており、p21発現上昇に伴う細胞老化が、がん病態発症に関わっている可能性が報告された。そこで、ドキシサイクリン依存的にPRCC-TFE3を高発現するヒト尿細管上皮細胞株を用いてp21の発現や細胞周期解析を実施した。PRCC-TFE3の高発現によりANGPTL2およびp21の発現が誘導されることを確認した。さらに、細胞周期解析を行ったところ、PRCC-TFE3の高発現により細胞周期の遅延が認められ、ANGPTL2をノックダウンした場合、PRCC-TFE3による細胞周期の進行遅延が抑制されることを見出した。しかし、ANGPTL2をノックダウンした場合もPRCC-TFE3によるp21の発現誘導に影響は認められなかったことから、ANGPTL2はp21の発現制御とは別のメカニズムによって細胞周期の進行抑制に寄与していることが示唆された。
昨年度までにXp11.2 転座型腎細胞がんモデルマウスを用いて同定した尿中miRNAのバイオマーカーとしての有用性を検証した。ヒト尿細管上皮細胞株とヒトXp11.2 転座型腎細胞がん細胞株の培養上清に含まれるエクソソーム中miRNAの含有量を解析したところ、ヒト尿細管上皮細胞株に比べヒトXp11.2 転座型腎細胞がん細胞株における同miRNAのエクソソーム中含有量が著明に増加していることを明らかにした。この結果より、ヒトにおいても尿中バイオマーカーとして同miRNAが有用性である可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒトXp11.2 転座型腎細胞がん細胞株やドキシサイクリン依存的にPRCC-TFE3を高発現するヒト尿細管上皮細胞株を用いた解析から、ANGPTL2シグナルがPRCC-TFE3による細胞老化誘導に寄与している可能性を見出し、モデルマウスを用いて同定した尿中miRNAが、ヒトXp11.2 転座型腎細胞がんのバイオマーカーとして有用である可能性を示唆する成果を得るなど、本研究は順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

今後、ANGPTL2をノックダウンしたがん細胞株やドキシサイクリン依存的にPRCC-TFE3を高発現するヒト尿細管上皮細胞株を用い、PRCC-TFE3による細胞老化誘導に関連するANGPTL2シグナルを検討するとともに、Xp11.2 転座型腎細胞がんモデルマウスを用いて、PRCC-TFE3による細胞老化誘導とがん病態発症との関連を中心に検討する。
また、尿中バイオマーカーとしてmiRNAの有用性については、本研究期間を通じて、健常者、Xp11.2転座型腎細胞がん患者、およびXp11.2転座型腎細胞がん以外の腎がん患者の尿サンプルを随時採取し、最終年度までにヒトにおいても尿中エクソソーム内miRNAがXp11.2転座型腎細胞がんに特異的なバイオマーカーとして有用か検証する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] NIH(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      NIH
  • [雑誌論文] Dual functions of angiopoietin-like protein 2 signaling in tumor progression and anti-tumor immunity.2019

    • 著者名/発表者名
      Horiguchi H, Kadomatsu T, Kurahashi R, Hara C, Miyata K, Baba M, Osumi H, Terada K, Araki K, Takai T, Kamba T, Linehan WM, Moroishi T, Oike Y.
    • 雑誌名

      Genes Dev

      巻: 33 ページ: 1641-1656

    • DOI

      10.1101/gad.329417.119

    • 査読あり
  • [雑誌論文] MicroRNA-204-5p:A novel candidate urinary biomarker of Xp11.2 translocation renal cell carcinoma.2019

    • 著者名/発表者名
      Kurahashi R, Kadomatsu T, Baba M, Hara C, Itoh H, Miyata K, Endo M, Morinaga J, Terada K, Araki K, Eto M, Schmidt LS, Kamba T, Linehan WM, Oike Y.
    • 雑誌名

      Cancer Sci

      巻: 110 ページ: 1897-1908

    • DOI

      10.1111/cas.14026

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] TFE3 XP11.2 translocation renal cell carcinoma mouse model reveals novel therapeutic targets and identifies GPNMB as a diagnostic marker for human disease.2019

    • 著者名/発表者名
      Baba M, Furuya M, Motoshima T, Lang M, Funasaki S, Ma W, Sun HW, Hasumi H, Huang Y, Kato I, Kadomatsu T, et al.
    • 雑誌名

      Mol Cancer Res

      巻: 17 ページ: 1613-1626

    • DOI

      10.1158/1541-7786.MCR-18-1235

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 加齢関連疾患とアンジオポエチン様因子2シグナル2019

    • 著者名/発表者名
      門松 毅
    • 学会等名
      第19回日本抗加齢医学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] アンジオポエチン様因子2シグナルによる代謝制御変容と加齢関連疾患2019

    • 著者名/発表者名
      門松 毅
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [図書] アンチ・エイジング医学 特集 老化と炎症 5. 慢性炎症とサルコペニア2019

    • 著者名/発表者名
      門松 毅
    • 総ページ数
      115
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [備考] 熊本大学 大学院生命科学研究部 分子遺伝学講座

    • URL

      http://www.kumamoto-u-molgene.jp

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公開日: 2021-01-27  

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