研究課題/領域番号 |
18K07242
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
堺 隆一 北里大学, 医学部, 教授 (40215603)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / Srcキナーゼ / RNAi / チロシンリン酸化 / 細胞運動能 / 細胞増殖能 |
研究実績の概要 |
神経芽腫の悪性化に関わるALKキナーゼのタンパク質複合体の解析で、これまでにALKがFlotillin-1によりタンパク質レベルで活性化-不活性化の制御を受けることを見出し、その活性化を媒介するシグナル分子ShcCやShp2が、Srcファミリーキナーゼの基質としてリン酸化による制御を受けていることが示唆された。Srcファミリーの神経芽腫の進展における役割については、他の成人の固形腫瘍同様に転移・浸潤の過程に関わることは示唆されるものの、通常のがん遺伝子の活性化が極めて限られている小児がんの神経芽腫でどのような役割をしているのか詳細は分かっていない。本研究では神経芽腫由来のNB39-nu細胞やTNB-1細胞を用いて、Srcキナーゼやその基質分子が神経芽腫の悪性化のプロセスにおいてどのような役割をしているかの解析を進めている。 前年度にかけて行ってきたSrcキナーゼ阻害剤を用いた解析をさらに進め、神経芽腫細胞の細胞運動能や細胞増殖能に加え浸潤能に対しSrc阻害剤がどのような影響を与えるかについての解析を行った。また一方で、Srcシグナルの役割についてさらに詳細に検討するため、Srcの基質分子のsiRNAによるノックダウンの影響の解析を進めた。p130Cas、コルタクチン、パキシリン、δカテニンなどSrcに基質群に対するsiRNAを設計し、神経芽腫細胞においてタンパク質レベルでの発現を効率よく発現をおさえる条件をエレクトロポレーション法を用いて見出すことができた。コルタクチンやパキシリンについては、発現抑制によって細胞形態が紡錘形から球形に変化することが観察されたが、細胞増殖能や細胞運動能に対する影響は限定的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の神経芽腫細胞を用いたが他の細胞株よりsiRNAの導入が難しく、目的の遺伝子のノックダウンの条件検討に予定よりも時間がかかった。また緊急事態宣言などに応じて大学から遠隔地への出張や学部内への立ち入りが制限された時期も多くあり、思ったように研究を進めにくい状況ではあった。
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今後の研究の推進方策 |
神経芽腫細胞はやはりノックダウンが十分にかかりにくく、CRISPR/Cas9システムを使って細胞内でのノックアウトを準備している。これまで得られたデータを整理して、神経芽腫でSrcファミリーの活性化シグナルを伝えている媒介分子を絞り込み、新たな治療モデルを今年度に創出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
緊急事態宣言による学部内立ち入り制限や出張制限で全体に研究を進めにくい環境であったことに加え、siRNAによる発現抑制実験の条件検討に予想より時間を要したため、細胞に与える影響の解析などの一部が次年度に持ち越しになった。
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