研究課題/領域番号 |
18K07245
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
出口 敦子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10422932)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肝転移 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
がんの転移には、がん微小環境に類似した炎症に惹起された微小環境が転移先に形成され、転移を促進する可能性が示唆されている。本研究は、転移先として肝臓に着目し、がんが転移する際に前もって肝臓に形成される腫瘍に依存した転移前微小環境と腫瘍間とのクロストークにより転移促進する分子機序を解明するため、当該年度中に主に下記1.-3.の検証を行った。 1. 肝指向性転移前微小環境形成因子欠失マウス、受容体欠失マウスにマウス大腸がんを移植したところ、野生型マウスと比較して、腫瘍の進展が抑制されることを見いだした。さらに、腫瘍進展抑制の分子機序を解明するため、腫瘍内、肝臓等における免疫応答細胞の解析を行った。今後、着目した細胞集団をソーティングし、肝指向性転移前微小環境形成因子刺激により免疫抑制作用が増強されるかを検証する。 2. 肝指向性転移前微小環境形成因子と候補受容体とのアミノ酸結合領域を特定するために、肝指向性転移前微小環境形成因子由来ペプチドを合成し、受容体との結合や、競合アッセイを行うことにより、受容体結合に必要な候補アミノ酸領域を得た。今後、結合アミノ酸領域を含んだペプチドカラムを作製し、抗体のアフィニティー精製を行い、担がんマウス実験に使用する。 3. 肝臓に転移・生着可能ながん細胞が持つ特質を同定するために、親株がん細胞との遺伝子プロファイリングを行い、転移先を決定づけるがん細胞側の候補因子を同定し、これら因子の発現ベクターを作製した。今後、親株にそれぞれの候補因子を発現させることで、転移能が亢進するか、また組織特異性を持つかを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝指向性転移前微小環境形成因子遺伝子欠失マウス、受容体欠失マウスにて、腫瘍進展抑制を見いだすことができ、分子機序の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
肝指向性転移前微小環境形成因子による転移促進の分子機序の解明のため、次年度以降、下記の検証を行う。 1.腫瘍に依存した肝指向性転移前微小環境形成因子の発現を制御する分子を特定する。 2. 当該年度中に宿主側の転移前微小環境形成因子だけでなく、腫瘍細胞からも転移前微小環境形成因子が誘導されることが示唆されており、宿主側転移前微小環境形成因子との質的な違い等も含めて解析することを予定している。 3. 肝指向性転移前微小環境形成因子に対する抗体を、肝指向性転移前微小環境形成因子との受容体結合領域同定した後に結合アミノ酸領域を含んだペプチドによりアフィニティー精製することで中和抗体を得て、担がんマウスに投与し、治療効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な消耗品等の価格が残額を上回り、当該年度中の購入が不可能であるため、次年度必要試薬等の購入の一部として使用する予定である。
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