研究課題/領域番号 |
18K07246
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研究機関 | 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所) |
研究代表者 |
安藤 清宏 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 副部長 (10455389)
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研究分担者 |
末永 雄介 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (80581793)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CHK1 / FGFR2 / MEK / ERK / neuroblastoma / MYCN / kinase inhibitor |
研究実績の概要 |
Checkpoint Kinase 1に対する阻害剤(以下、CHK1阻害剤)は、非臨床において高い抗腫瘍効果を示しているが、臨床試験の結果は不十分なことから、その感受性を決定するバイオマーカーの同定は急務といえる。本研究は、CHK1阻害剤の感受性に関わる特徴的な遺伝的背景を探索することによって効果予測及び適応決定しうる遺伝子変化を同定して診断薬開発につなげることを目的とする。令和2年度は、まずCHK1阻害剤感受性及び耐性バイオマーカーを決定することを目的にTH-MYCN神経芽腫マウスモデルの腫瘍から得た初代培養細胞を用いて、CHK1阻害剤及び前年度に増感効果をもつことを見出したATM阻害剤とDNA-PK阻害剤の細胞増殖に及ぼす影響を調べた。その結果、CHK1阻害剤処理は増殖抑制効果を示さなかったが、DNA-PK阻害剤は効果を持つことが判明した。このことからCHK1阻害剤の感受性には、既知のMYCN増幅に加えて一昨年度に関連を見出したFGFR2遺伝子の欠失などの新たな遺伝子異常が関与すると考えられ、一方ではCHK1阻害剤の耐性にはDNA-PKによるDNA損傷修復が関連すると考えられた。また、昨年度に遅延していた「タンパク質レベルの解析と感受性遺伝子の同定」について、FGFR2蛋白質の発現解析及び CHP134細胞株由来のFGFR2安定発現細胞を用いてCHK1阻害剤感受性に及ぼす影響を検討した。その結果、FGFR2の恒常的発現はCHK1阻害剤抵抗性を誘導し、これは下流のMEK/ERK経路の活性化に依存することが判明した。これらの結果から本年度は、CHK1阻害剤感受性バイマーカーにFGFR2-MEK-ERK経路が深く関わることを学会発表し、現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に計画していたMYCN増幅神経芽腫におけるCHK1阻害剤感受性及び耐性バイオマーカーについては、当初予定していたin vivoにおけるCHK1阻害剤治療効果及び臨床検体を用いたバイオマーカーの検討までに至ることができなかったものの、昨年の実施状況報告書において研究の推進方策として挙げていたCHK1阻害剤感受性を規定するFGFR2下流シグナルの同定、及びこれを標的とした既存の阻害剤によるCHK1阻害剤増強効果の検討、さらにTH-MYCN神経芽腫マウスモデル由来の初代培養細胞における検討については概ね順調に進捗した。その結果としてMYCN増幅神経芽腫におけるCHK1阻害剤感受性及び耐性にはFGFR2-MEK-ERK経路の遺伝子異常及びDNA-PKによるDNA損傷修復が深く関連するという一定の見解を得たばかりでなく、TrametinibによるCHK1阻害剤相乗効果の可能性も得られた。したがって、当該年度に明らかにする課題に関しては進捗したと考えるが、本研究内容の論文化については受理に至っておらず遅延していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の投稿中の内容に関して論文受理を目指す。特に追加実験として、本研究で用いたCHP134細胞以外の神経芽腫細胞株を用いて一貫した結果が得られるかどうか検討を加える。具体的には、FGFR2の発現が検出されるSK-N-AS細胞及びIMR32細胞を用いてCRISPR/Cas9によるFGFR2のノックアウトを行い、またCHK1阻害剤に比較的感受性の高いSMS-SAN細胞を用いてFGFR2安定発現細胞株を作成、それぞれについてCHK1阻害剤の感受性及びMEK-ERK経路の活性の変化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究内容が投稿中のため、次年度に論文掲載料の支払いに使用することを計画している。
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