研究課題/領域番号 |
18K07248
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
西川 裕之 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 研究技術員 (90387077)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DSB応答タンパク質 / ユビキチン化 / 脱ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
昨年度までの質量分析を用いた検討の結果、BAP1に対する相互作用タンパク質を同定した。BAP1の相互作用因子をIPAソフトウエアでの解析を行い、質量分析で得られた大量複合データを、各種パスウェイにてどのようなタンパク質の変動があるかを網羅適な解析を試みた。 同時期に検出された結合タンパク質群に意味のあるパスウェイなのか検討する為に、HEK-293T細胞を用いた過剰発現系にて再度検証をおこなった。検討の結果、BAP1に対して結合し翻訳後修飾をおこなうタンパク質複合体がBRCA1、BARD1複合体に対して結合量を増幅している事が判明した。BAP1の翻訳後修飾がどのように複合体形成に関与するかの検討を開始した。質量分析をおこないリン酸化を中心にユビキチン化などを予測したところ複数のリン酸化部位、モノユビキチン化部位が候補として検出され、アミノ酸変位体をプラスミドベクターで作成しHEK-293T細胞を用いた過剰発現系にて検討をおこなっている。 癌抑制遺伝子BAP1の変異は悪性中皮腫、ブドウ膜および皮膚黒色腫、肺腺癌および腎細胞癌を引き起こすことが報告されているが乳癌、卵巣癌などでは報告が無い。後述のBRCA1との関係やゲノムの安定性、DNA修復に働く事など共通の役割が多い事から研究代表者は予備検討を行いcBioPortalにて乳癌患者のBAP1遺伝子に変異を有した場合のカプランマイヤー生存曲線を作成し、検討したところ有意差を見いだした。BRCA1がDNA損傷修復や転写制御に関ると明らかにされたことから、乳がんの発生にDNA損傷修復機能の異常が強く関っていると推測されている。またBAP1はDSB後の相同組換え修復に関与している事も報告されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では相互作用のあったタンパク質を同定した後、SCAFFORDソフトウェアにて一覧、数値化してIPAソフトウェアにて解析を行いIPAでの解析を行う事により質量分析で得られた大量複合データを、各種パスウェイにてどのようなタンパク質の変動があるかを網羅適に解析する予定であった。IPAソフトウェアを用いる事でパスウェイ上でDSB後のタンパク質の変化を検出をおこなったが複数検出した結合タンパク質群が1つの複合体形成をおこなっていると示唆しており、この新規複合体を解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初実験計画に従って、DSB後の役割を検討する。 また、今回発見したBAP1、BRCA1、BARD1及びBAP1結合タンパク質の複合体の機能解析を平行しておこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも少ない回数の質量分析を用いた実験でコストがかからなかった。 また、HEK-293Tを用いた過剰発現系の実験を主におこなった為、必要経費が計画よりも安くなった。 当初計画に従って次年度は経費を使用し、また新規発見複合体の機能解析に予算を使用したいと考える。
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