免疫沈降-液体クロマトグラフィ-タンデムマススペクトロメトリー (IP-LC-MS/MS)法を用いて実験を行った。培養細胞に目的遺伝子(BAP1) を導入してタンパク 質を発現させた。タンパク質同士の結合を保ちながら核及び クロマチンタンパク質を可溶化する為に細胞溶解には150mM以下の塩濃度に調製した溶解液に低温下 で機能するエンドヌクレアーゼ(ベンゾナーゼ)を用いて実験を行った。放射線照射又は薬剤にてDSBをおこさせ又はコントロールとしてDSBさせていない細胞を溶 解しBAP1に結合するタンパク質を免疫沈降し直接プロテアーゼ処理して複合体の混合ペプチドを作成した。作成したペプチドをLC-MS/MSにて分析し質量データを 得た。この混合ペプチドの質量データをMATRIX Science社のMASCOT 及びX!Tandemの2つのプログラムを用いてデータベース検索し結合タンパクを複数同定した。 複合体がBRCA1、BARD1複合体に対して結合量を増幅している事が判明した。BAP1の翻訳後修飾がどのように BAP1、BRCA1、BARD1複合体形成に関与するか、検討した。質量分析をおこないリン酸化を中心にユビキチン化などを予測したところ複数のリン酸化部位、モノユビキチン化部位が候補として検出され、アミノ酸変位体をプラスミドベクターで作成しHEK-293T細胞を用いた過剰発現系にて検討をおこなった。 結果、BAP1に対して結合し翻訳後修飾をおこなうタンパク質としてカゼインキナーゼ2(CK2)を同定した。 CK2存在下ではBAP1、BRCA1、BARD1複合体の形成が促進される事が判明した。また今回発見したBAP1のリン酸化部位及びユビキチン化部位に変異が入るとBAP1、BRCA1、BARD1複合体が形成されない事が判明した。
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