研究実績の概要 |
ATPクエン酸リアーゼ(ACLY)はクエン酸とATPとCoAからオキザロ酢酸とアセチルCoA、ADPを生成する酵素で、多種のヒトがんで高発現が認められること、抗肥満薬として阻害剤が開発されていることから、がんの分子標的ターゲットとして期待されている。全身でACLYを発現するトランスジェニックマウス(Tg)を作成し、自発腫瘍の形成を観察した。当初、C57BLを背景とすると、血球系腫瘍(LL)が高頻度(58%)に発生した。C57BLはLLを多発するコロニーもあるため、LLに耐性のC3Hにバッククロスを行った。129匹(オス/メス67/62匹)を18月以上無処置で観察した。コントロール(C)として、バッククロスに用いた同じコロニーのC3H 49匹(同19/30)を用いた。Tgには73匹(57%, オス41, 61%, メス 32, 52%)に腫瘍が発生した。Cで腫瘍発生を見たのは8匹(16%, オス 4, 21%, メス 4, 13%)で、有意にTgの腫瘍発生が多かった(全体、オス、メス全てp<0.05)。発生した主な腫瘍はTgでは肝がん33匹(26%, オス 22, 33%, メス 11, 18%), LL28匹(22% オス12, 18%, メス16, 26%), 肺腫瘍7匹(5%, オス6, 9%, メス 1, 2%)で、Cでは肝がん7匹(14%, オス 4, 21%, メス 3, 10%), 肺腫瘍 1匹(2%, オス 1, 5%, メス なし)であった。CにLLは発生しなかった。肝がんの発生に統計学的有意差はなかった。ACLYは未分化大細胞型リンパ腫の発生に関連するとの報告がある(Basappa J.ら Blood 2015 126:465)。今回までの結果はLLとACLYの関連を示唆していた。このマウスの腸内細菌叢を調べ、発がんへの関与を検討している。
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