研究実績の概要 |
ATPクエン酸リアーゼ(ACLY)は、多種のヒトがんで高発現が認められ、阻害剤が開発されていることから、がんの分子標的として期待されている。全身でACLYを発現するトランスジェニックマウス(Tg)を作成し、自発腫瘍の形成を観察した。当初、C57BLを背景とすると、血球系腫瘍(LL)が高頻度(58%)に発生した。C57BLはLLを多発するコロニーもあるため、LLに耐性のC3Hにバッククロスを行った。 18月以上無処置で観察した346匹(オス/メス178/168匹)、および18月前に全身不良で解剖した34匹 (同16/18), 計380匹 (同194/186)を対象とした。コントロール(C)として、バッククロスに用いた同じコロニーのC3H 49匹(同19/30)を用いた。Cはすべて18月の観察を行った。Tgは205匹 (54%, オス126, 65%, メス 79, 42%)に腫瘍が発生した。Cで腫瘍発生は8匹(16%, オス 4, 21%, メス 4, 13%)で、有意にTgに多かった (全体、オス、メス全てp<0.05)。Tgに発生した腫瘍は肝がんが最も多く109匹(29%, オス 86, 44%, メス 23, 12%), 次いでLL 68匹(18% オス24,12%, メス44, 24%)だった。Cでは肝がんが7匹(14%, オス 4, 21%, メス 3, 10%)に発生し、LLは発生しなかった。C3Hは肝がんに感受性があり、性差があるが、メスTgでは肝がんよりLLが高頻度に発生した。ACLYは未分化大細胞型リンパ腫の発生に関連するとの報告がある(Basappa J.らbioRxiv doi.org/10.1101/2020.01.20.910752)。今回までの結果はLLとACLYの関連を示唆していた。このマウスの腸内細菌叢を調べ、発がんへの関与を検討している。
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