研究課題
今年度は、昨年度B16メラノーマ担癌マウスモデルにて有効性と安全性が確認されたフェニルボロン酸修飾ポリマーナノ粒子PBAA-NPを用いて、より詳細な薬物動態を確認した。所定の時間ごとに血液中および腫瘍中の10B濃度を定量した結果、血中および腫瘍中のBPAは注射後1時間でプラトーに達し(血中3.9ppm、腫瘍中15.7ppm)、その後急速に減少した。また、BPAの場合血中と腫瘍中の10B濃度には,時間に関係なく高い相関関係が認められた。一方、BPAとは対照的にPBA-NPは血中でのクリアランスが非常に弱く、投与後12時間の時点で血中の10B濃度はBPA群よりも高かった。腫瘍中の10B濃度は、血中の10B濃度と同様の傾向を示したが、NanoPBAがBPAよりも高いレベルを示すことはなかった。正常臓器では、BPA群はPBA-NPに比べて注入後の早い段階で10B濃度が顕著に高かったが、PBA-NPのクリアランスは低いためBPA群とPBA-NPの差は徐々に縮まった。注目すべきは、脾臓と腸においてPBA-NP群がBPAと同等かそれ以上の10Bレベルを示し、マウスの脾臓と腸のシアル酸発現レベルが関与していると考える。ついで、PBA-NPの極少量の10Bによる有効性を裏付けるため、腫瘍内の10Bのミクロ分布を正確に分析できる固体核トラック検出法にて細胞内10B微小分布を調べた。粒子線による生成されるピットと最寄りの核の距離を測定したところ、PBA-NPの平均距離はBPAよりも短かった。ピット累積分布から、PBA-NPによって送出された10Bのほぼ100%が、生成されるα線の飛程5-9μmの範囲内に分布されたことが明らかとなった。比べて、BPAは飛程よりも遠い領域にかなりの10Bが分布していることも明らかとなった。
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Biomaterials
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