研究課題
近年、第4のがん治療である免疫療法が有望視されている。特に、T細胞の機能抑制にかかわる免疫チェックポイントであるB7/CTLA-4およびPD-1/PD-L1経路に対する阻害剤の有効性に注目が集まっている。抗PD-1抗体投与に対して上乗せ効果を示す治療標的を探索した結果、我々が同定したCD69の新規機能リガンドであるMyl9/12に対する抗体の抗腫瘍効果を見出した。本研究は、腫瘍組織におけるMyl9/12の局在機構と、CD69を介した細胞傷害性T細胞疲弊の分子機構を明らかにすることにより、CD69-Myl9/12システムを標的とした新規がん免疫療法の開発を目指す。CRISPR/Cas9システムを用いてMyl9/12遺伝子欠損をゲノム編集したマウス大腸がん細胞株を作製した。この細胞のin vitroにおける増殖能は維持されていたが、in vivoにおける増殖能が顕著に低下していたことから、CD69-Myl9/12システムによる免疫逃避機構の存在が示唆された。Myl9/12の放出はがん細胞自体に依存していると考えられるため、抗Myl9/12抗体投与は腫瘍組織を選択的に標的とする、副作用の少ない治療法になる可能性がある。さらに、CD69-Myl9/12システムによる細胞傷害性T細胞の制御機構を明らかにするために、腫瘍抗原特異的CD8T細胞に着目した解析を行った結果、CD69欠損CD8T細胞におけるエフェクター機能の亢進を見出した。
2: おおむね順調に進展している
腫瘍組織における腫瘍抗原特異的CD8T細胞に着目した解析を行った結果、CD69欠損CD8T細胞におけるエフェクター機能の亢進を見出した。さらに、CD69-Myl9/12システムによる細胞傷害性T細胞の制御機構の詳細な解析が可能になると考えている。
今後は腫瘍組織における腫瘍抗原特異的CD8T細胞に焦点をあてた解析を行う。RNA-seqおよびATAC-seq等の網羅的解析を行い、エフェクター機能亢進の詳細な分子機構を明らかにする。さらに、Myl9/12遺伝子欠損大腸がん細胞株を用いて、CD69-Myl9/12システムによる細胞傷害性T細胞の制御機構の詳細な解析を行う。
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