研究課題
レセプターチロシンキナーゼ阻害薬(TKI) は、ALK 融合遺伝子陽性肺癌(ALK 肺癌)やEGFR 変異肺癌(EGFR 肺癌)に著効を示す分子標的薬であり、臨床で使用されている。しかし、顕著な腫瘍縮小が見られた場合でも1~2 年程度で耐性を獲得することが重要な課題である。近年、分子標的薬の獲得耐性機構として上皮間葉転換(EMT) が注目されており、耐性機構の一因であることが示唆されているが、その克服治療法は確立されていない。申請者らはこれまでの検討により、miR-200c/141 の発現低下を介した経路によりEMT が誘導され、薬剤耐性を獲得していることを見出した。そこで、本研究ではmiR-200c/141 の発現を誘導する薬剤の中から臨床応用可能なものを選抜し、肺癌のEMT による獲得耐性を克服する新規治療法の開発を目的とした。新たにスクリーニングを行なった5種類の薬剤についてEMTによる薬剤耐性を克服できるか否かについての検討をALK肺癌において検討した。その結果、これまでに我々が見出したQuisinostatが最も高い効果を示すことを見出した。そこでALK肺癌におけるEMTによる薬剤耐性をQuisinostatにで克服する治療の成果をまとめ、論文発表した(Cancer Res. 2019 1658-1670)。また、EGFR肺癌株においてもEMTによる耐性克服に有効な候補薬の効果を検証したところ、新たに薬剤Aが有効であることを見出した。この成果についても論文投稿に向けて実験を進めている。
2: おおむね順調に進展している
ALK-TKI耐性株については、選抜された5種類の候補薬の効果を予定通り検証し、これまでに我々が見出したQuisinostatが最も高い効果を有することを見出した。その成果についての論文投稿も完了した。また、EGFR-TKI耐性株についてもスクリーニングを行い、これまでに報告されていない新たな候補薬を見出した。こちらについても論文投稿に向けての実験を進めており、順調に進展していると言える。
今後はEGFR-TKIに耐性のEGFR肺癌株におけるEMTを克服する治療法の開発に向けて研究を進める。すでにターゲット分子を絞り込めているので、in vivoでの検討や詳細なメカニズムの検討を進め、論文投稿を目指す。
当初は候補薬を使っての動物実験まで予定していたが、Quisinostatが最も有効であることが明らかになったことより、本年度は動物実験を行う必要がなくなった。次年度のEGFR変異株の耐性克服の動物実験にて繰り越した予算を使用する予定である。
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Cancer Resarch
巻: 79 ページ: 1658-1670