近年、国内外におけるがん研究により、摘除がん組織に三次リンパ組織の形成が認められた際、集積した免疫細胞の機能に基づき、そのがん患者の予後が良好であることが明らかになりつつある。このような知見から、安定的な免疫組織を人工的に再構築する技術は機能低下に陥った免疫機能を回復させ、がん、感染症に対する免疫能を高め、さらに免疫制御の最適化による難治性疾患の治療にも役立つことが期待される。我々はこれまでにリンパ組織ストローマ細胞を用いてマウス生体内にマウス型二次リンパ組織様構造の構築法を確立し発表してきた。 本研究では、生体内において長期間安定で機能的なヒト型リンパ組織の人工的構築法を確立して、抗腫瘍免疫などの免疫誘導能の証明を目的としている。 前年度までに、ヒトストローマ細胞とヒト末梢血単核球を用いて三次リンパ組織様構造を構築し、重度免疫不全マウス生体内において、人工リンパ組織に起因する抗原特異的な二次免疫応答を検出することができている。人工リンパ組織内には、移植個体からの脈管系も入り込んでおり、その効果を全身に及ぼすことが可能である。 最終年度に関しては、二次免疫応答だけでなく、一次免疫応答の誘導が可能であるかの検討も行い、作成した人工リンパ組織が免疫反応の場として機能的であることを確認した。今後、各種免疫細胞の持つ機能別に局所へと集積させることが可能になれば、必要に応じた免疫機能を持ったリンパ組織様構造を構築することが可能になると考える。
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