研究課題/領域番号 |
18K07267
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
佐藤 妃映 北陸大学, 医療保健学部, 准教授 (70362960)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL) / DNAメチル化異常 / ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1) |
研究実績の概要 |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)及びHTLV-1関連脊髄症(HAM)の原因ウイルスである。これらの疾患は一旦発症すると非常に予後不良であり、現在のところ有効な治療が確立されていない。このウイルスがATLを引き起こす分子機構について明らかにするために、DNAメチル化異常がどのように関与するのかどうかについて、免疫学的機能異常との関連も含めて総合的に解析する。これにより、ATL発症高危険群(ハイリスクキャリア)の同定方法、発症予防法や有効な治療法の開発に繋げることを目指している。 今年度はATL患者の追跡調査症例の解析を行った。長年にわたり複数回採取された同一患者検体を用いてDNAメチル化異常を検出し、臨床経過に伴う病態の変化との関連について検討した。解析した8つの遺伝子は、網羅的遺伝子解析により選定した。癌抑制遺伝子(p15、p16、p73)、DNA修復酵素関連遺伝子(hMLH1, MGMT)、アポトーシス関連遺伝子(DAPK)、細胞接着関連遺伝子(HCAD)、血液細胞に特異的なSHP1について、DNAメチル化異常を検出した。 ATL発症例とキャリア維持症例を比較して、DNAメチル化頻度の増加がATL発症に関与している因子のひとつになり得るのかどうかについて、解析を行った。 解析は、複数回採取された各時点での診断とメチル化遺伝子数、臨床パラメーター(HTLV1ウイルス量、異常リンパ球、sIL2R)との関連について検討した。 統計解析として、ATL発症を応答変数、メチル化遺伝子数を説明変数としてロジスティック回帰分析を行い、オッズ比とその95%信頼区間を算出した。 その結果、メチル化遺伝子数のオッズ比は2.16となり有意となった。これより、臨床パラメーターの中でもメチル化遺伝子数がATLの発症に関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者とATL患者検体を用いて解析した結果、わずか8つの遺伝子のDNAメチル化異常が病態を反映していること、DNAメチル化異常がウイルスキャリアからATLの発症や臨床病期の進展を予測できる可能性を示すことができたからである。統計学の専門家との議論を通して、同一患者を複数回測定していることを考慮した適切な解析方法を選択することができた。 しかし、研究代表者の異動が影響し、免疫学的機能解析の実施が予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きATL患者の追跡調査症例の解析として、同一患者検体を用いてDNAメチル化異常と臨床病理学的因子、臨床経過に伴う病態の変化との関連について詳細に検討する。キャリア維持症例、慢性型から急性型への移行例等を追加し、ATLの病態を明らかにする。同時に免疫学的な観点からクローナリティー解析も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた免疫学的解析を次年度に行うことになったからである。 未使用額はその経費に充てる予定である。
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