研究実績の概要 |
多施設共同研究(WJOG8114LTR試験)において末梢血検体から抽出した腫瘍由来DNA(tumor-derived, cell-free DNA, cfDNA)について、EGFR感受性・耐性遺伝子に関する高感度法(digital PCR法)を用いた解析を行った。この中で、治療開始後4週時点でのcfDNA減衰の有無が長期予後に影響する事を報告した(Akamatsu H, Koh Y, Yamamoto N, Lung Cancer 2019)。一方でcfDNAを用いた増悪予測がCTなど画像での増悪判断に比して感度が優れるという事は示せなかった。解析時点での増悪症例がそれ程多くない事もあり、増悪予測ツールとしてのcfDNAの意義については今後の検討課題である。また、本研究の副次解析として、exon19欠失のバリアントについて次世代シーケンサを用いて解析し、これらの差異がEGFR阻害剤の有効性に影響を与えることを報告した(Tokudome N, Akamatsu H, Koh Y, BMC Cancer 2020)。 当院で行ってきた前向き観察研究に関しては94例の症例登録を行った。高感度次世代シーケンサーによる検出系確立のため、最初の12例についてAVENIO ctDNA Surveillance Kitとdigital PCRの比較を行い、それぞれ12例・11例でEGFR遺伝子変異が検出されたことから、両者の感度は同程度と判断した。94例全体について、治療開始時・4週後での検体採取とDNA抽出は全例で終えたが、2020年4月時点で60例が無増悪の状態であり、増悪時の検体収集・解析には至っていない。これらの治療開始時期から推定するに、本年中に多くの症例が増悪すると考えられるため、適宜増悪時検体の集積を進めつつ解析を行う予定である。
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