研究課題
子宮頸がんは、HPVの持続感染により引き起こされ、がん細胞においてもHPVの発現が認められる。中でもHPV16型と18型は子宮頸がんの約70%を占める。子宮頸がん細胞中ではHPV E6、E7遺伝子が発現しており、発がんおよびがん形質の維持に重要な役割を果たしている。E6、E7遺伝子は発がんにおける責任遺伝子であり、免疫細胞療法の良いターゲットとなる。2013年、末梢血CTLからiPS細胞を樹立し、再びCTLを誘導する技術が東京大学の中内教授らによって開発された。慢性的な抗原暴露により疲弊したCTLが、抗原特異性を保ったまま強い増殖能やテロメア長の伸展を認め、T細胞機能の若返りを証明した(Nishimura et al. Cell Stem Cell 2013)。その後、我々の研究グループは臨床応用目指しiPS細胞由来EBウイルス特異的CTL(EBV-CTL)が、難治性EBウイルス関連腫瘍に対しin vivoでも長期間リンパ腫を排除できる強力な抗腫瘍効果と生存期間延長効果を証明した(Ando et al. Stem Cell Reports 2015, Haematologica 2020)。本研究課題では難治性子宮頸がんに対する有効な新規治療法開発のため、HPV16 E6/E7に対するiPS細胞由来抗原特異的CTLを誘導し、その抗腫瘍効果を確かめる。産婦人科医師(研究分担者)の協力を得て、子宮頸がん患者2名、健常人2名のドナーを得た。HLAを調べてA2402もしくはA0201を持つドナーの末梢血よりHPV16 E6/E7-CTLを誘導開始した。その結果健常人ドナーよりHPV16 E6-CTLを誘導することに成功し、クローン樹立後iPS細胞を樹立し(T-iPSC)その後CTLに再分化誘導することを確認できた。iPS細胞由来HPVウイルス特異的CTLが、末梢血由来HPVウイルス特異的CTLと比較して、子宮頸がんの増殖を生体内で強力に抑制し、生存期間を延長させる効果があることをマウスを使って確認した(Honda et al. Molecular Therapy 2020)。
すべて 2020
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Molecular Therapy
巻: 28 ページ: 2394~2405
10.1016/j.ymthe.2020.07.004
Haematologica
巻: 105 ページ: 796-807
10.3324/haematol.2019.223511.
Cytotherapy
巻: 22 ページ: 642~652
10.1016/j.jcyt.2020.04.098