研究課題/領域番号 |
18K07277
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 進 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70518422)
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研究分担者 |
小川 徹也 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40334940)
花村 一朗 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70440740)
佐野 塁 愛知医科大学, 医学部, 講師 (50813846)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 免疫チェックポイント / 免疫療法 / がん微小環境 / 頭頸部扁平上皮がん |
研究実績の概要 |
昨年度にひきつづき頭頸部扁平上皮癌がん (HNSCC) 手術検体(10例)を追加し、HNSCCにおける免疫環境について検討した。まず、HNSCC手術時に採取した、がん組織、リンパ節(転移、未転移)、末梢血からリンパ球を分離し、フローサイトメトリーにより、エフェクター制御性T細胞 (eTreg) のCD4陽性T細胞中の陽性率、及び、通常型T細胞 (Tconv) , eTreg 上の免疫チェックポイント分子(ICM)の発現について解析した。がん組織浸潤リンパ球 (TIL) 24例、転移ドレインリンパ節リンパ球(M-DLNL) 16例、未転移ドレインリンパ節リンパ球(NM-DLNL) 16例、末梢血リンパ球 (PBL) 28例 間で、eTreg 陽性率を比較すると、TIL (平均36.6%, SD 12.5), M-DLNL (15.1%, 10.5), NM-DLNL (5.5%, 2.7), PBL (4.3%, 3.7) と、TIL において著しく高いことが明らかとなった。また、TIL中eTreg においては、他の部位に比べCD25、ICMの発現が、著しく高く、活性化状態にあることが示された。さらに、M-DLNL中eTreg陽性率は、NM-DLNL中よりも高く、今後、がん組織内免疫環境形成を考える上で興味深い所見であった。次に、多重免疫蛍光染色により、がん組織内のICMの発現について解析した。25例のうち15例 (60%)でがん細胞上PD-L1陽性と判定され、また、すべての症例で、マクロファージ上にPD-L1の発現を高頻度に認めた。これらのPD-L1陽性細胞の周辺には、PD-1陽性T細胞の強い浸潤がみられた。これらのことから、HNSCC組織中では、eTreg とICMが免疫抑制環境の形成に、強く関わっていることが示唆され、これらを標的とした免疫複合療法が有用と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の目標である、フローサイトメトリー、多重免疫蛍光染色を用いた、制御性T細胞、免疫チェックポイント分子の発現解析については、概ね終了し、一定の結論を得るに至り、その成果は、専門誌(Cancer Science) に掲載された。Ex vivo 機能解析は、機能解析に必要な免疫細胞を得られないことが多いことや、HLA型が合わないケースがあることからサンプルに制限があるものの、少しずつ進んでいる。解析できた症例は少ないが、今後、機能解析に重点を置くことにより、例数を増やすことを考えている。血清中IDO活性の評価については、これまで凍結保存したサンプルを用いて、最終年度において評価していく。
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今後の研究の推進方策 |
1.組織学的解析の継続; 今年度までに、解析はほぼ満足できる状況まで達成できたが、リンパ節内eTreg陽性率について興味深い所見が得られているため、この点に絞って、解析を継続する。具体的には、リンパ節中eTreg のサブセット解析、TCRレパートア解析などから、所属リンパ節ががん組織内に浸潤するeTreg の供給源となっている可能性について検討する。 2.HNSCC患者血清中に含まれる免疫抑制因子の解析; 抗原特異的CTLの増殖に対するHNSCC血清の影響について検討すると共に、血清中のトリプトファン、キヌレニンをLC-MSで定量し、IDO活性との関連について検討する。また、血清中に含まれる抑制因子について質量分析計を用いてスクリーニングすることも視野に入れる。 3. HNSCC TIL に含まれる 抗原特異的CTLの機能解析; エプスタインバールウィルス(EBV)陽性HNSCC患者、パピローマウィルス(HPV)陽性HNSCC患者由来TILから、EBV-CTL, HPV-CTL をin vitro で誘導、増殖させ、腫瘍内免疫抑制環境との関係について検討する。EBVや、HPVが陽性でない場合は、サイトメガロウイルスや、インフルエンザウイルスに対する免疫応答を解析することで、免疫環境との関連について検討する。また、ipilimumab, mogamulizumab, nivolumabといった、免疫治療薬のex vivo でのCTL活性化効果と、免疫環境との関連についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数調整できなかった。来年度使い切る予定
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